2001 Fiscal Year Annual Research Report
蛋白質分子間認識の細胞内1分子計測法の開発と細胞内情報伝達研究への応用
Project/Area Number |
11480210
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
佐甲 靖志 大阪大学, 医学系研究科, 助教授 (20215700)
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Keywords | 全反射顕微鏡 / MAPK経路 / 細胞増殖 / 会合状態 / ブラウン運動 |
Research Abstract |
生きている細胞中で蛋白質1分子を画像として検出し、それらの相互作用を計測する方法を開発し、細胞内情報伝達反応における分子間認識の測定に応用することが本研究の目的である。1分子検出には、我々の開発した細胞内蛍光1分子イメージングの方法を用いた。この方法を応用して、上皮成長因子(EGF)の関与する細胞増殖の細胞内情報伝達反応を、細胞内で1分子計測した。 (1)EGF受容体の細胞膜上での動態の測定 これまでの研究はリガンドであるEGFを蛍光標識して観察していたが、本年は受容体をGFP融合分子として細胞に発現させ、1分子計測を行った。受容体分子の80%以上が膜上で2-6分子クラスターを作っていることが分かった。クラスターは細胞膜上で動的に融合・解離を繰り返し、一部は細胞骨格と相互作用していた。EGFの結合はクラスター内部で、情報伝達の初期反応である受容体分子間の直接相互作用を引き起こした。人工的にクラスターの集合状態を変化させることにより、情報伝達反応を制御できることが明らかになった。 (2)RasとRaf-1の相互作用の細胞内測定 GFPからYFPへの蛍光励起エネルギー移動の測定により、Ras-GTPとRaf1-YFPの間の相互作用を細胞内で計測した。EGFで刺激された細胞で、刺激後60分以上にわたってRas, Raf1が膜ラフリング部位に濃縮し、そこでRas/Raf1の直接相互作用が起こっていることが分かった。1分子可視化により、Ras, Raf1とも、細胞膜上で高速にブラウン運動を行っていること、Ras, Raf1が細胞膜と細胞質の間を行き来していることを示唆する結果を得た。したがって、膜ラフリング部位への濃縮は、動的平衡によって維持されていると考えられる。
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[Publications] Ueda, M., Sako, Y., Tanaka, T.et al.: "Single molecule analysis of chemotactic signaling in Dictyostelium cells"Science. 294. 864-867 (2001)