2001 Fiscal Year Annual Research Report
出芽ホヤ多能性細胞の脱分化を制御するタンパク質群とその作用機作
Project/Area Number |
11480221
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
川村 和夫 高知大学, 理学部, 教授 (30136361)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤原 滋樹 高知大学, 理学部, 助教授 (40229068)
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Keywords | ホヤ / 出芽 / 多能性 / 脱分化 / レクチン / αヘリックス / 逆転写酵素 / ミトコンドリアリボソームRNA |
Research Abstract |
ホヤレクチンTC14-2とTC14-3を単離し、部分アミノ酸配列を手がかりにcDNAをクローニングした。TC14-3リコンビナントタンパク質はホヤ株化培養細胞に対して増殖抑制と分化抗原の発現を誘導した。Site-directed mutagenesisにより変異タンパク質を調製し、TC14-3の機能中心を調べた。まず、カルシウム結合ポケットを作るグルタミン酸(E106)をグリシンに置換した。カルシウムポケットが形成されないために、ガラクトース結合能が失われると予想される。この変異タンパク質は培養細胞に対する機能を完全に失っていた。次にα2ヘリックスのフェニールアラニン(F65)をアスパラギン酸に置換した。F65はA61と疎水結合し、ダイマー形成に寄与すると予想される。この変異タンパク質も培養細胞に対する機能を失った。二量体化することでレクチンの結合価がマルチバレントになることが必須なのであろう。TC14-2とTC14-3に特異性を与えているアミノ酸を探索した。TC14-3のスレオニン(T69)をアルギニン(R69)に置換すると活性を失い、TC14-2のR69をT69にすると活性を獲得した。69番目のアミノ酸はα2ヘリックスの末端に位置している。アルギニンの側鎖は大きいので、TC14-2の二量体が不安定になり、それが生物活性をもたない主な原因であろうと結論した。 ミサキマメイタボヤの出芽期に逆転写酵素の遺伝子産物が増加していることが判明した。その遺伝子はショウジョウバエのgypsyに似たレトロポゾンをコードしていた。ショウジョウバエのレトロポゾンは染色体の末端を伸長する働きがあり、細胞の分裂寿命をリセットするといわれている。ホヤ逆転写酵素は出芽期に多能性上皮細胞で発現していた。また、初期生殖細胞でも発現していることから、この遺伝子は生殖特異的に発現・機能しており、出芽の際の細胞若返りに奇与している可能性が示唆された。 mtlrRNAはミトコンドリアゲノムにコードされており、ミトコンドリアのリボソームを構成する構造RNAである。ショウジョウバエの胚発生期に細胞質に移動し、生殖細胞形成に必須の役割を果たすことが知られている。ミサキマメイタボヤではこのRNAが芽体の脱分化細胞で特異的に発現していた。エボヤの胚発生ではこのRNAが筋肉細胞予定域に集中的に発現し、このRNAと部分的に相補性を持つmRNAに結合し、その局在化に寄与しているといわれている。現在、16SリボソームRNAと部分相補性をもつミサキマメイタボヤmRNAを精力的に探索しているところである。 以上、ホヤ体細胞の脱分化を調節する因子群と作用機序を捉えることが出来た。
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[Publications] Yubisui, T., Takahashi, H., Takabayashi, S., Fujiwara, S., Kawamura, K.: "Characterization of cytochrome b5 in the ascidian, Polyandrocarpa misakiensis and budding-specific expression"Journal of Biochemistry. 129. 709-716 (2001)
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[Publications] Matsumoto, J., Nakamoto, C., Fujiwara, S., Yubisui, T., Kawamura, K.: "A novel C-type lectin regulating cell growth, cell adhesion and cell differentiation in budding tunicates"Development. 128. 3339-3347 (2001)
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[Publications] Kuwamura, K: "Molecular and cellular advantage of transdifferentiation system for asexual reproduction of the tunicate Polyandrocarpa misakiensis. In : The Biology of Ascidians"Springer Verlag, Tokyo.(edited by Sawada et al.). 293-299 (2001)
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[Publications] Fujiwara, S., Kamimura, M., Ohashi, M., Kuwamura, K.: "Molecular bases of bud development in ascidians. In : The Biology of Ascidians"Springer Verlag, Tokyo.(edited by sawada et al.). 300-304 (2001)