2001 Fiscal Year Annual Research Report
一分子観察・操作法による神経細胞間の接着とシナプス形成の機構の研究
Project/Area Number |
11480238
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
楠見 明弘 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 教授 (50169992)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
八木 健 大阪大学, 細胞生体工学センター, 教授 (10241241)
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Keywords | カドヘリン / 1分子観察・操作 / 生細胞 / 海馬初代培養神経細胞 / シグナル伝達 / 光ピンセット / 膜骨格 / ラフト |
Research Abstract |
本研究は、それが始まる少し前に我々が可能にした方法、すなわち、生きている培養神経細胞の細胞膜上で、膜タンパク質の運動を一分子レベルで追跡し、さらに光ピンセットで膜上を自由に動かす手段に基づき、始められた。本研究においては、ラット海馬の初代培養細胞において、E型、T型、および、シナプス型カドヘリンに働く運動と局在化の制御機構を検討してきた。その結果、膜骨格、それに加えて、カドヘリンが会合した場合にはそれが誘導するラフトドメインが膜タンパク質の運動制御において極めて重要な役割を果たしていることが、1分子ダイナミクスの研究からわかってきた。そこで、シナプス形成の第一段階として、それに至る神経細胞間の接着誘導機構を重点的に検討した。特に、T-カドヘリンが会合すると、それによってラフトが誘導され、それがさらに大きなラフト形成を誘起し、そこでT-カドヘリンの下流の信号が誘起されることが分かった。これらの信号が、どのように、接着の誘起と阻害(T型カドヘリンは、最初の認識のあと二つの神経細胞の接着を誘起する信号と阻害する信号を出し得る)の間で切り替えられるか、について現在検討中である。また、カドヘリンの運動の制御機構を、細胞同士の衝突が生起する前後で比較し、カドヘリンの接着部位への集合機構を調べた。すなわち1分子のレベルで運動を観察し、またその分子を光ピンセットで牽引して、それに膜骨格から働く力を調べた。膜骨格の網目で囲い込んだり、膜骨格上を特定の部位へ輸送したりする様子が見いだされ、カドヘリンの接着形成における膜骨格の積極的な関与が示唆された。
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[Publications] R. Iino, I. Koyama, A. Kusumi: "Single molecule imaging of GFP in living cells : E-cadherin forms oligomers on the free cell surface"Biophys. J.. 80. 2667-2677 (2001)
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[Publications] S. Ohta-Iino, Y. Takaoka, K. Kitamura, A. Kusumi: "Fast lipid disorientation at the onset of membrane fusion revealed by molecular dynamics simulations"Biophys. J.. 81. 217-224 (2001)
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[Publications] R. Iino, A. Kusumi: "Single fluorophore dynamic imaging in living cells"J. Fluorescence. 11. 187-195 (2001)