1999 Fiscal Year Annual Research Report
世界文化遺産・白川郷の持続的保全方法に関する研究-自然と人間の共存・共生する新しい道を求めて-
Project/Area Number |
11490013
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
合田 昭二 岐阜大学, 地域科学部, 教授 (70021334)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 正子 岐阜大学, 地域科学部, 教授 (30198858)
森田 優己 桜花大学, 人文学部, 助教授 (50231642)
肥後 睦輝 岐阜大学, 地域科学部, 助教授 (80198994)
有本 信昭 岐阜大学, 地域科学部, 教授 (40115390)
横山 悦生 名古屋大学, 教育学部, 助教授 (40210629)
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Keywords | 白川郷 / 世界文化遺産 / 持続的保全 / 景観構成要素 / 結い / 屋根の葺き替え / 交通需要マネジメント / 産業遺産 |
Research Abstract |
自然環境については、1957年と93年撮影の空中写真の解析から、白川村荻町周辺では、カヤ場と耕地の減少、人工林と雑木林の増加が顕著に認められた。また戸ケ野集落、鳩ケ谷集落では合掌家屋の減少と耕地の区画整理により景観が大きく変化し、荻町と対照的であった。 社会環境のうち、合掌家屋の葺き替え資材と労働力は、長く「結い」によって調達されていたが、現在は「結い」が部分的となり、資材と労働力は主に個人的なルートか業者依存となっている。また葺き替えは、「伝達」政策による補助金と住民の文化財保全意識が、それを支えている。交通環境については、東海北陸自動車道の延長(1999年11月)、安房トンネルの開通(1997年12月)により交通量が増大しつつある。生活環境と観光資源が一体化している白川郷では、交通需要マネジメントが不可欠であることが明らかとなった。 文化環境については、白川村出身の作家・江夏美好の作品『下々の女』や『わたしの飛騨高山』を考察し、合掌集落保全のためになされた作者の提言や社会的活動の内容を考察した。すなわちその作品や社会的活動自体が白川郷の文化遺産であり、その持続的保全の必要性と「郷土文学が地域振興に果たす役割」が明らかとなった。また岐阜県における発電用水車ケーシングの変遷を解明し、白川郷の御母衣ダムで使用されていた発電用水車の歴史的位置づけを明確にし、産業遺産を含んだ地域資源の持続的保全の方向性を明らかとした。 今後の課題は、住民の生活の場そのものが文化遺産である荻町をはじめ、その他の集落を含めて、住民と住民組織の努力の側面から、『自然』-『社会(産業、労働、日常生活、交通、文化財保存政策)』-『文化(産業遺産、文学作品、人々の意識・想い)』を結びつけた「自然と人間の共存・共生する道」を解明したい。
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