2000 Fiscal Year Annual Research Report
反応速度指標支援型温度計による低度変成・変質作用の熱史評価-被熱継続時間の精密決定-
Project/Area Number |
11554019
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
大平 寛人 島根大学, 総合理工学部, 助手 (60273918)
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Keywords | フィッショントラック / アニーリング / 熱履歴 / 古地温勾配 / 松遼盆地 / 大慶油田 / アパタイト / ジルコン |
Research Abstract |
フィッショントラック(FT)年代とFT長解析を堆積盆の古地温勾配の推定に応用した.試料として中国東北部松遼盆地・大慶油田から掘削されたいくつかのコアを準備した.これら試料からジルコン・アパタイトを取り出し,FT年代の測定,FT長の測定を行った.ジルコンのFT年代は101-120Maを示し,FT長は8ミクロン以下の短縮したトラックを全く含まない単一ピークの頻度分布を示した.燐灰石中のFT年代は盆地周辺部では96-118Maを示したが,盆地中央部では20-45Maという著しく若い年代を示し,深度の増加とともに若い値を示す傾向が見られた.既報の年代データをもとに試料が被った埋没深度曲線を復元し,さらにいくつかの地温勾配を仮定し,それぞれの地温勾配下での埋没作用に対して順解析を行った.このことによって得られた各地温勾配におけるFT年代値の深度による変化傾向と,実際に観察された年代値の変化傾向を比較検討した.その結果,実測値を最もよく説明する地温勾配は40-45℃であることがわかった.FTの熱による短縮傾向は時間よりもむしろ熱に対する感度(温度依存性)が強いことから,推定された地温勾配は,現在からさかのぼり20-50Maの期間の平均的な熱構造を反映しているものと考えられる.このように温度-時間依存型の指標であるFTアニーリングが堆積盆の古地温勾配の推定に有効であることを示した. 一方国内の隠岐道後に分布する花崗岩類について,貫入岩脈の熱によるFTアニーリングを調べ,熱履歴の復元を試みた.隠岐道後の花崗岩類が,約5Maの貫入岩脈の広域的熱源により200℃に達する被熱を経験したことが明らかとなった.FTアニーリングが貫入岩脈による熱の評価にも有効であることを示した.
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[Publications] 姫野修,大平寛人 ほか: "フィッショントラック熱史解析による中国東北地方松遼盆地の堆積時代と古地温勾配"フィッショントラック・ニュースレター. 13巻. 21-24 (2000)
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[Publications] 大平寛人,筒井夏実: "隠岐島後に分布する基盤岩類のFT年代"フィッショントラック・ニュースレター. 13巻. 59-61 (2000)
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[Publications] T.Kojima,M Okaka and H.Ohira: "Paleomagnetism and fission-track ages of Oki-Dogo Island"Earth.Planet and Space(EPS). 53巻・1号. 45-54 (2001)
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[Publications] 石原敬久,大平寛人,立石雅昭: "山形県新庄盆地に分布する折渡層のフィッショントラック年代"地質学雑誌. 106巻・12号. 905-908 (2000)