2000 Fiscal Year Annual Research Report
電子局在効果を利用したクラスター半導体における熱電材料の開発
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11555160
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
木村 薫 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 教授 (30169924)
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Keywords | 熱電変換材料 / 準結晶 / AlPdRe合金 / 電気伝導率 / ゼーベック係数 / 熱伝導率 / 共有結合性 / ポーラス組織 |
Research Abstract |
Al系正20面体相(I相)準結晶は、金属と半導体の間の中間的な電気物性を持つことが知られ、金属の利点である大きな電気伝導率(σ)と、半導体の利点である大きなSeebeck係数(S)を併せ持つ、新しい熱電材料が期待される。Al系I相の非金属的電気物性は、原子構造の非周期性に起因する電子局在効果や正20面体対称性に起因するFermiレベル近傍の擬ギャップにより説明されるが、I相を構成する正20面体クラスターの結合性とも深い関係がある。我々の目的は、クラスターの結合性を共有結合と金属結合との間で変化させることによる熱電特性の最適化である。今回は、I相の中で最も共有結合性が強く半導体的である、AlPdRe準結晶の熱電特性を調べた。 試料は、アーク溶解後、高周波溶解により均質化した母合金を石英管に真空封入し、1223Kで12時間焼鈍することにより作製した。X線回折により単相性を確認後、所定の形状に切り出した試料について、室温から750K又は1000Kまでの範囲でσ、S、熱伝導率(κ)を測定した。 Pd濃度を固定してRe濃度を変化させた場合、Sはそのピークを迎える500K付近での値が、+84μV/K(Re 9.5at%)、+89μV/K(Re 9.0at%)、+56μV/K(Re 8.5at%)、+7μV/K(Re 7.5at%)とRe濃度のわずかな違いで大きく変化した。σの値は80〜160(Ωcm)^<-1>で、温度上昇とともに単調増加した。電気物性の大きな組成依存性は、Fermi準位付近での急激な状態密度の変化や、Re濃度の増加による共有結合性の増加に関係すると思われる。また、κは室温で約1W/mKで温度上昇と共に単調増加し、そのうち格子の熱伝導の寄与が70〜80%を占めた。I相の非周期構造を反映する上に、ポーラス組織であることがκの低下に寄与している。これらの結果から無次元性能指数ZTを見積もった。わずかな組成の変化によって、熱電性能が大きく変わることが分かる。さらに広範囲の組成での熱電特性評価の必要性と共に、第4元素添加によるクラスターの結合性の制御といった試みによって熱電特性が向上する可能性がある。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] 桐原和大,木村薫: "正20面体クラスター固体としてのAl系準結晶の共有結合性、半導体的物性と熱電材料としての可能性"まてりあ(日本金属学会報). 39-8. 679-684 (2000)
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[Publications] K.Kirihara,T.Nakata,M,Takata,Y.Kubota,E.Nishibori,K.Kimura and M.Sakata: "Covalent Bonds in AlMnSi Icosahedral Quasicrystalline Approximant"Physical Review Letters. 85-16. 3468-3471 (2000)
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[Publications] K.Kirihara,T.Nakata,M.Takata,Y.Kubota,E.Nishibori,K.Kimura and M.Sakata: "Electron-density distribution of approximants of the icosahedral Al-based alloys by the maximum-entropy method and the Rietveld refinement"Materials Science & Engineering A. 294-296. 492-495 (2000)
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[Publications] T.Nakayama,J.Shimizu and K.Kimura: "Thermoelectric Properties of Metal-Doped β-Rhombohedral Boron"Journal of Solid State Chemistry. 154. 13-19 (2000)
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[Publications] K.Kirihara and K.Kimura: "Covalency, semiconductor-like and thermoelectric properties of Al-based quasicrystals : icosahedral cluster solids"Science and Technology of Advanced Materials. (in press). (2001)