2002 Fiscal Year Annual Research Report
非鉛系強誘電体単結晶へのエンジニアード-ドメイン構造の導入による圧電特性の向上
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11555164
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
和田 智志 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助教授 (60240545)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秋山 善一 リコー株式会社, 中央研究所, 係長研究員
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Keywords | 非鉛系強誘電体単結晶 / エンジニアード・ドメイン / 圧電特性 / ドメイン構造制御 / 結晶異方性 / 圧電デバイス / チタン酸バリウム / ニオブ酸カリウム |
Research Abstract |
本年度は、エンジニアード・ドメイン構造の有用性を明らかにすること、及びエンジニアード・ドメイン構造の導入による圧電特性向上のメカニズムについて、更にエンジニアード・ドメイン構造におけるドメインサイズの制御による更なる最適化について詳細な検討を行った結果、エンジニアード・ドメイン構造が、本当に圧電特性の向上にとって重要であることを明らかにした。これまで、チタン酸バリウムやニオブ酸カリウム単結晶にエンジニアード・ドメイン構造を導入してきたが、エンジニアード・ドメイン構造の導入前後による圧電特性の向上は、2倍〜4倍程度にとどまっているのに対し、初めてエンジニアード・ドメイン構造を導入したPZN-PT単結晶では、導入前後において圧電定数は20倍〜30倍まで大きく向上した。この大きな向上の違いについて詳細に検討した結果、20倍〜30倍に向上したPZN-PT単結晶では、エンジニアード・ドメイン構造を導入した場合、非常に細かいドメイン構造(1μm)が導入されるのに対し、非鉛系強誘電体であるチタン酸バリウムやニオブ酸カリウムの場合には粗大なドメイン構造が導入された。そこで、この細かいドメイン構造をチタン酸バリウム単結晶に導入した場合、ドメイン構造の細かさにより圧電特性がどのように変化するのかについて検討を行った。そこで、正方晶構造であるチタン酸バリウム単結晶を、エンジニアード・ドメイン構造を導入するための結晶方位[111]方向にカットし、ドメイン観察用の試料を作成した。この結晶に[111]方位に電場を印加しながら温度も同時に変化させることで、ドメイン構造の温度・電場依存性について検討した。その結果、[111]方向において、室温で電場を印加した場合には、正方晶から斜方晶への電界誘起相転移相転移により、非常に微細なドメイン構造が入るものの、電圧を除去するともとの粗い状態へと可逆的に戻ることを見いだした。これに対し133℃のキュリー温度以上において、電場を印加すると、光学等方体から光学異方体へと変化し、更に電場を印加すると、この中から細かいドメイン構造が部分的に析出し2相共存状態へと移行し、更に電場を印加すると、結晶全体が微細なドメイン構造になることを見いだした。この構造は非常に安定であり、室温でも安定に存在できる。そこで、何故このようなドメイン構造が入るのかについて、ラマン散乱測定によるその場観察を併用することで、結晶構造の違いについて検討した。その結果、立方晶である常誘電体から電場の印加に伴い、強誘電相である正方晶が生成すること、このとき、少しずつ正方晶構造が部分的に現れるが、正方晶と立方晶では単位格子体積が正方晶の方が大きいため、応力が発生し正方晶構造の部分に細かいドメイン構造が生成することを明らかにした。そこで、通常の分極処理を用いて通常の粗大なドメイン構造を持つ圧電振動子と、キュリー温度以上での分極処理を用いた微細なドメイン構造を持つ圧電振動子を作製し、その圧電特性を測定した。その結果、粗大なドメイン構造を持つ結晶では、エンジニアード・ドメイン構造の導入前後で圧電定数は約3倍程度増加しているのに対し、微細なドメイン構造を持つ結晶では、粗大なドメイン構造を持つ結晶よりも更に2倍以上高い圧電特性を示すことを見いだした。しかも、微細なドメイン構造を持つ結晶の分極状態は完全ではなく、50%程度しか分極できていない。従って完全に分極処理を達成することができれば、圧電定数はさらに飛躍的に増大することが予測できる。以上の結果は、同じエンジニアード・ドメイン構造を持つ試料であっても、そのドメインのサイズが細かいほど圧電特性が大幅に向上することを見いだした。従って、PZN-PT単結晶における飛躍的な圧電特性の向上に、ドメイン構造の細かさが大きな寄与をしていることを明らかにした。このことから、更にドメイン構造を小さくし、ナノドメインを結晶中に導入することで飛躍的に高い圧電特性を、非鉛系強誘電体に導入できる可能性を示唆した。
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[Publications] Satoshi WADA: "Piezoelectric Properties of KNbO_3 Single Crystals with Various Crystallographic Orientations"Ferroelectrics. 273. 339-344 (2002)
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[Publications] Satoshi WADA: "Piezoelectric Properties of PZN-PT Single Crystals with Various Domain Configurations"Transaction of the Materials Research Society of Japan. 27. 255-258 (2002)
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[Publications] Satoshi WADA: "Intrinsic Elastic, Dielectric and Piezoelectric Losses in PZT Ceramics Determined by Immittance-Fitting Method"Journal of the American Ceramics Society. 85. 1993-1996 (2002)
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[Publications] Satoshi WADA: "Enhanced Ferroelectric Related Behaviors of Ferroelectric Single Crystals using the Domain Engineering"Transaction of the Materials Research Society of Japan. 27. 281-286 (2002)
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[Publications] Satoshi WADA: "Development of dielectric measurement technique for micrometer-ordered pure BaTiO_3 and Ba(Zr_<0.1>Ti_<0.9>)O_3 single crystals"Transaction of the Materials Research Society of Japan. 27. 277-280 (2002)
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[Publications] Satoshi WADA: "Piezoelectric Single Crystal Pb[(Zn_<1/3>Nb_<2/3>)_<0.93>Ti_<0.07>]O_3 (PZNT93/7) for Ultrasonic Transducers"Journal of Crystal Growth. 237-239. 848-852 (2002)