Research Abstract |
自動車・家電製品等から生じるスクラップ鋼材は大量であり,表面処理鋼板からの亜鉛あるいはモーターや配線による銅の混入率が高く,磁気選別した原料を溶融した場合には低品位の鋼材となる。本研究では,酸洗により亜鉛を化学的に除去後,アノード電解によって残留亜鉛と銅を溶解除去すると同時に,反対側の電極(対極)で溶解した銅をカソード析出・回収しようとするもので,高品位の鋼材の再生と有用資源である亜鉛と銅を低エネルギーコストで回収することを目的としている。 前年度までの研究によって,pH10前後のアンモニア塩水溶液中では,鉄が不働態化し,銅および亜鉛はほぼ100%の電流効率でアンモニア錯体を形成して溶解すること,デュアルポテンショスタットで電位制御することにより対極では70%以上の電流効率で銅の回収が可能であることを確認し,大容量のポテンショスタットを試作した。 本年度の研究では,スクラップの処理速度を増加させるためには,アノード溶解速度を増加させる必要があることから,アンモニア塩水溶液中での銅のアノード溶解反応機構を解明し,処理速度増加のための要因について検討した。 回転ディスク電極によって,溶液中のイオンの拡散速度を制御した条件でアノード溶解し,電極電位,pH, NH_3およびNH_<4^+>濃度を変化させ,その影響を調べた。その結果,銅のアノード溶解反応は,(1)Cu→Cu^+_<ad>+e,(2)Cu^+_<ad>+NH_3→Cu(NH_3)^+,(3)Cu(NH_3)^++NH_3→Cu(NH_3)_2^+の3段階の反応であり,通常の撹拌条件ではNH_3の拡散が反応を律速し,撹拌速度を無限大に外挿した条件では(2)の過程が律速することを明らかにした。これらのことから,銅のアノード溶解速度を増加させるには,(1)全アンモニア濃度を増加させる,(2)pHを高めNH_3/NH_4^+の比を増加させる,(3)撹拌速度を増加させることが重要であることが明らかになった。
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