1999 Fiscal Year Annual Research Report
牛乳を利用した消化管感染予防機能を持つ畜産食品の開発
Project/Area Number |
11556048
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
金丸 義敬 岐阜大学, 農学部, 教授 (50111795)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
海老名 卓三郎 宮城県立がんセンター研究所, 部長
長岡 利 岐阜大学, 農学部, 助教授 (50202221)
源 宣之 岐阜大学, 農学部, 教授 (10144007)
児玉 義勝 ゲンコーポレーション, 免疫研究所, 所長
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Keywords | 牛乳 / ミルクムチン / 特異抗体 / 糖タンパク質 / ロタウイルス / ピロリ菌 / 細胞感染実験 / 動物感染実験 |
Research Abstract |
乳幼児下痢症では最大の病因であり、先進国においては高い罹病率を、発展途上国では下痢にともなう脱水症による多数の死を招いているHuman rotavirus(HRV)感染症と、健康な成人に胃炎、潰瘍を引き起こし、ひいては癌の発症につながるものと考えられているHelicobacter pylori(Hp)感染症の二つの消化管感染症に対して、牛乳を利用した予防機能を持つ食品開発を計画した。乳牛の初乳に含まれる抗体と常乳の牛乳ムチンを主な研究対象成分とし、(i)それらの有効性を動物感染実験において詳細に検討し、(ii)人への投与を念頭に置きながら、実際の機能性食品として利用する際の効果的な使用法を明らかにし、(iii)それらに基づいてHRVとHpによる感染症予防機能を持つ新しい畜産食品(例えばこの成分を強化した粉乳)の開発のための基盤を得ることが当初の目的である。今年度は牛乳ムチンについて、主としてin vitroの感染予防機能について検討を加え、以下のような結果を得た。1.HRV感染阻害作用-牛乳乳清からゲルろ過で分離した高分子量タンパク質会合体(F1)の強力なHRV感染阻害作用が確認された。しかし、動物感染実験系では、HRV経口接種による乳飲みマウスの下痢の発症を予防することは出来なかった。F1をSDS添加緩衝液によってさらに分画を進めた結果、複数の低分子量タンパク質成分が活性に関与することを突き止めた。これらの成分を含む画分は0.1μg/mLのタンパク質濃度で感染をほぼ100%阻害する能力を持つことが明らかとなった。この能力はF1の数100倍に相当する。現在動物実験系での予防機能を評価中である。2.Hp感染阻害作用-in vitroのHp感染阻害作用評価には、胃ムチンへのHpウレアーゼの接着阻害を指標とする実験系を用いた。この場合もやはりF1に強力な阻害作用があることが確認された。F1分画物の阻害作用を評価したところ、HRVの場合と異なり、非常に高分子量のタンパク質成分が活性に関与している可能性が認められ、現在さらに詳細に検討中である。また、動物感染実験系での評価も検討している。
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