2001 Fiscal Year Annual Research Report
生殖機能に影響する内分泌撹乱物質の同定およびその作用機構解析
Project/Area Number |
11557120
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Research Institution | THE UNIVERSITY OF TOKYO |
Principal Investigator |
堤 治 東京大学, 医学部・附属病院, 教授 (60134574)
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Keywords | 内分泌攪乱化学物質 / 初期胚 / エストロゲンレセプター / ビスフェノールA / 次世代影響 / 低用量作用 / 多嚢胞性卵巣症候群 / 性差 |
Research Abstract |
各種内分泌撹乱物質の生殖機能への影響を解析する方法の確立を目的に、体外受精系、胚培養系、trophoblast outgrowth assay系、胚移植系、母体投与系等を確立を試みてきた。今年度の最も重要な成果は内分泌撹乱物質ビスフェノールAに関するものである。ボランティアの健常男性、健常女性、および多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)患者より早朝空腹時に採血し、インフォームドコンセントを得てビスフェノールAを測定した。その結果血清ビスフェノールA濃度は、正常男性が1.49±0.1 ng/ml、正常女性が0.64±0.10ng/mlであり、男性の方が有意に(P<0.01)高値であった。血清ビスフェノールA濃度は,正常女性群(0.64±0.10ng/ml)に比較しPCOS群(1.04±0.10ng/ml : P<0.01)では有意に高値であった。これより、ヒト血中ビスフェノールA濃度はおよそ1ng/ml程度であること、その濃度には性差が存在し、男性の方が女性よりも高値であることを明らかにした。ビスフェノールAの初期胚発育モデルへの添加で、2細胞期から8細胞期への胚広い濃度範囲(fMレベルから100μM)にわたり発育率は大きな影響を受けない。ところが2細胞期胚から胚盤胞への発育率では1-3nMでは促進効果が観察され、逆に100μMでは有意に低下した。BPAの胚盤胞発育への用量反応性をみると100μMの高濃度における抑制作用と1-3nMの低濃度域における促進作用に分けて考えることができる。高濃度における作用は従来の毒性量による用量反応性のある部分と考えることができる。これに対して、1-3nMの低濃度域については毒性量と異なり、用量反応性を認めず作用も毒性と逆反応で、いわゆる低用量作用であると判断できた。しかもこの濃度は、環境中に存在し、ヒトの血液や卵胞液で検出される濃度と大きな差異はない。さらに着床前初期胚へのビスフェノールA作用の意味をより明らかにするために被爆して育った胚盤胞を仮親の子宮に移植した。その結果、出生3週後の体重は被爆群で有意に大であることが判明した。low dose effectという面および次世代影響の点から注目される。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] Osuga Y: "Evidence for the presence of hepatocyte growth factor (HGF) expression in human ovarian follicles"Molecular Human Reproduction. 5889. 703-707 (1999)
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[Publications] Hiroi H: "Stage-specific expression of estrogen receptor subtypes and estrogen responsive finger protein in preimplantation mouse embryos"Endocrine Journal. 46(1). 153-158 (1999)
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[Publications] Koga K: "Evidence for the presence of angiogenin in human follicular fluid and the upregulation of its production by human chorionic gonadotropin and hypoxia"J Clinical Endocrinol Metab. 85(9). 3352-3355 (2000)
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[Publications] Tsutsumi O: "Estrogen receptor-mediated effects of a xenoestrogen, bisphenol a, on preimplantation mouse embryos"Biochem Biophys Res Commun. 270(3). 918-921 (2000)
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[Publications] Takai Y: "Preimplantation exposure to bisphenol A advances postnatal development"Reproductive Toxicology. 15(1). 71-74 (2001)
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[Publications] Osuga Y: "Evidence for the Presence of Keratinocyte Growth Factor (KGF) in Human Ovarian Follicles"Endocrine Journal. 48(2). 161-166 (2001)
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[Publications] 堤 治: "新女性医学大系 産婦人科手術の基礎"中山書店(印刷中). (2001)