2000 Fiscal Year Annual Research Report
内分泌攪乱作用を指標とした歯科用有機材料の生物学的安全性試験法の開発
Project/Area Number |
11557147
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
本郷 敏雄 東京医科歯科大学, 大学院・医歯学総合研究科, 助教授 (60142444)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山崎 聖美 国立公衆衛生院, 栄養生化学部, 主任研究官 (00218439)
一條 秀憲 東京医科歯科大学, 大学院・医歯学総合研究科, 教授 (00242206)
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Keywords | 内分泌攪乱化学物質 / 歯科用レジン / ポリカーボネート / ビスフェノールA / 溶出試験 / 材質試験 / 唾液 / ヒト乳ガン由来細胞 |
Research Abstract |
近年、外因性内分泌撹乱化学物質が大きな社会問題となっており、その1つであるビスフェノールA(BPA)を原材料として合成されたBis-GMAやポリカーボネート(PC)は歯科用材料として前者はフィッシャーシーラント、コンポジットレジンやボンディング材などで使用され、後者は矯正用ブラケット、暫間被覆冠、レジン歯、義歯床などに用いられている。歯科領域においても高分子素材に関連する化学物質の安全性を評価する必要があり、高分子を素材とする歯科用材料中のBPAの存在量およびその溶出動態を解析すること並びにその高感度検出系を開発することは急務の問題である。昨年度の研究では、人工唾液に浸漬したポリカーボネート製歯科用材料の一つである矯正用ブラケットから、BPAが顕著に溶出していたので、本年度は唾液に浸漬した矯正用ブラケットからのBPA溶出動態並びに残留BPAについて液体高速クロマトグラフィーで検討したところ、人工唾液浸漬に比較して、唾液に浸漬するとBPA溶出量が顕著に増加していることを見いだし、更にそのBPA溶出は単にその材料に残留しているBPAが溶出したのではなく、その材料であるPCが唾液中で加水分解したため、BPA溶出量が顕著に増加したことも見いだした。これらのことから、模擬口腔内環境を反映するための溶出試験法としては浸漬液として人工唾液よりも唾液を使用しないと本来の溶出量が反映されないことが明らかになった。従来の乳ガン細胞増殖試験法では、ヒト乳ガン由来細胞であるMCF-7が用いられるが、継代培養していると形質転換などのため細胞本来の性質を維持することが難しく、また再現性が悪かったので、ヒト乳がん由来細胞であるT47D細胞を用いたところ、MCF-7より感度が良かったので、この細胞を用いてBPA処理後のmRNAを抽出後、ディファレンシャル・ディスプレイを行い、発現の増加するcDNAについて検討したところ、ある遺伝子が検出され、現在検討中である。
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[Publications] 矢島功 ら: "歯科用ポリカーボネート製材料からのビスフェノールA溶出動態"歯科材料・器械. 19(SI35). 36 (2000)
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[Publications] 本郷敏雄 ら: "Bis-GMA系歯科材料からのビスフェノールA溶出について"歯科材料・器械. 19(SI36). 39 (2000)
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[Publications] Nao Kobayashi et al: "Effect of Xenoestrogens and Phytoestrogens on Breast Cancer Cells"日本内分泌攪乱化学物質学会第3回研究発表会要旨集. 320 (2000)
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[Publications] 高橋俊二 ら: "ピスフェノールA及び歯科充填材の遺伝子毒性とヒトインターフェロンによる毒性の解除"日本内分泌攪乱化学物質学会第3回研究発表会要旨集. 174 (2000)
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[Publications] 本郷敏雄 ら: "ポリカーボネート製矯正用ブラケットからのビスフェノールA溶出について"日本薬学会第120年会. (2001)