1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11610001
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
石垣 壽郎 北海道大学, 大学院・理学研究科, 教授 (40089363)
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Keywords | 量子力学 / 解釈 / 実在 / ブール束 / 連続スペクトル / 確率 / 無知解釈 |
Research Abstract |
量子力学の解釈問題において実在主義的な描像を得るためには,古典論理が成立するような解釈を試みる必要がある.量子力学の観測命題全体はブール束を構成しないが,1つのオブザーバブルの観測命題全体はブール束を構成する.したがって,あるオブザーバブルを指定すると1つのブール束が指定されることになり,これに属する観測命題の確率は古典的確率として扱うことができ,確率の「無知解釈」が可能になると見なされている. 本研究では,オブザーバブルが連続スペクトルをもつ場合,対応するブール束は原子的束とならず,観測命題の1つが真となることは確定的世界の1つの集合が指定されることを意味しないことが明らかにされ,ここから,量子力学においては,観測によって観測命題の1つが真であると確定することを,世界が何らかの仕方で確定していることとしては解釈できないことが導かれた.これは,古典統計力学との際立った違いである. ボームの隠れた変数理論は,バブによって,指定オブザーバブル(preferred observable)を「位置」とする解釈と見なされた.しかし,本研究が明らかにしたように,ボーム理論は,さらに,位置に関する観測命題からなる非原子的ブール束を確定的命題からなる原始的ブール束に置き換えることによって,確率の「無知解釈」を導入した,と見なされる.しかし,このとき,確定的命題の集合は確定的世界の集合と1対1に対応するが,確定的命題と観測命題との間に真偽に関する対応関係はないこと,よって,連続スペクトルをもつオブザーバブルの確率命題の確率を,確定的世界の集合族の上の古典的確率とは見なしえないことが明らかにされた. 現代物理学の最も基本的な理論は場の量子論であるから,上のような量子力学特有の特徴が場の量子論の中にどのように入り込んでいるかを調べ,実在主義が維持できるかどうかを検討するのがこれからの課題である.
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