2000 Fiscal Year Annual Research Report
行為に関する因果的な推論構造の論理学的研究とその哲学的考察
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11610011
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Research Institution | Hokkai-Gakuen University |
Principal Investigator |
鈴木 美佐子 北海学園大学, 法学部, 助教授 (50242300)
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Keywords | 行為 / 因果的言明 / 副詞消去推論 / 出来事の個別化 / 因果関係 / 出来事 / 行為文の推論構造 / 行為者 |
Research Abstract |
本年度は、平成11年度に行った行為文の分析に関する基本調査の成果を検討し、行為に関する因果的言明の推論分析を具体的ケースにあたって行った。行為文分析の基本調査の成果は、 (1)副詞を含んだ因果的言明からの副詞消去が自然にできない。 (2)目的語の消去推論ができない。 (3)与えられた行為文から行為者に関する存在言明を導出できない。 などの問題点が従来の分析方法にはあるということであった。(1)の原因は、(1)行為について記述した文の個別化のレベルが考慮に入れられていないこと、(2)行為文が十分な形で記述されていないこと、の二点である。(1)の個別化レベルを明らかにするため、具体的な行為文を材料に、個別化レベルを明示するダイヤグラムを書くという作業を行った。その結果、次のような見解を得た。副詞消去推論はこのダイヤグラムを個別化とは逆の方向へ上っていくことであるが、その際消去された副詞は行為内容をより一般的に限定する記述に置き換えられる。因果言明で副詞消去が自然にできないのは、因果言明の場合、原因となる行為と結果となる行為が一定の条件のを満たしていることによって、その因果関係が成立しているからである。そのため、副詞が消去されるという、その条件を超えた一般化がなされると因果関係は成立しなくなるのである。さらに、消去ができないという困難は、ダイアグラムに基づいて、行為文を十分な形で記述すれば((2))、生じないことも判明した。 (2)(3)については次年度の課題であるが、そういった問題を引き起こす根本原因は、行為文が記述する出来事が存在するとする出来事存在論的な考え方にあると筆者は考えている。 以上、本年度は具体的な行為文を分析することで、Davidson型分析のもつ困難の原因を見出し、その背後にある哲学的前提に関する考察へと進む道筋を得たと言える。
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