1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11610012
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Research Institution | Chuogakuin University |
Principal Investigator |
佐藤 英明 中央学院大学, 商学部, 助教授 (70192599)
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Keywords | 心理主義批判 / 現象学 / 認知科学 |
Research Abstract |
当初の研究実施計画にしたがい,フレーゲやフッサールがおこなった心理主義批判の対象とされた今世紀初頭の心理学の理論の内容を検討し,今日の認知科学の知見との本質的な相違を分析した.とくに,ミルやリップスの主張していた心理主義とはいかなる立場であったのかに焦点をあてて心理主義の主張を考察した.それとともに,認知科学がどのようなかたちで心理主義を内包しているのかを明らかにするために,特に今日の言語的認知の研究における自然主義的認識論に関する検討をおこなった.認知科学の草創期を支えていた古典的認知主義は,認知活動を生物学的基盤から完全に切り離して研究しようとするものであったが,言語現象を身体や生態的環境との連関において捉えようとする近年の認知言語学の試みは,生物学の知見や進化論的視点を導入する点において自然主義的傾向が見られる.こうした自然主義的傾向の内実を考察した研究成果は,論文「言語と進化」(『現象学生報』第15号)として発表した.これらの研究成果は,今後,二〇世紀初頭の心理主義と現代の認知科学との関係を分析する際に,活用しうるものと思われる. 平成11年10月以降は,フォーダーやデネットらに代表される心の哲学の立場からの認知科学へのさまざまなアプローチを検討している.心的内容をめぐる議論や,ホーリズムの問題等を含め,広い視野から今日の心理主義の内実を考察しており,その成果の発表準備中である.
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