2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11610015
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
神塚 淑子 名古屋大学, 情報文化学部, 教授 (20126030)
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Keywords | 道教思想 / 仏道論争 / 海空智蔵経 / 道性 / 唐代宗教 |
Research Abstract |
六朝隋唐期の道教経典に見える仏教概念の研究の2年目にあたる今年度は、昨年度に引き続き、『太上一乗海空智蔵経』(道蔵洞真部本文類。略称『海空智蔵経』)についての研究を行った。仏道論争がさかんであった唐代初めの道教においては、仏教との対抗意識が濃厚に見られる。その対抗意識は、道教独自の思想を強く打ち出して仏教とその優劣を競うというよりは、むしろ仏典の内容を織り込んだ道教経典を作成し、道教は仏教思想を包摂しているということを示すという形であらわされた。『海空智蔵経』はそのようにして書かれた最も代表的な道教経典の一つである。したがって、本経の研究には、語彙・語法・文体等について仏典との綿密な比較研究が求められる。そのための基礎作業として昨年度から本経の語彙索引の作成を継続してきたが、今年度、それを完成させた。また、本経が基づいた仏典との対応関係については、全体を見やすい形で明示した「海空智蔵経-仏典対照表」を完成させた。この索引と表は、科学研究費研究成果報告書として公刊する。 『海空智蔵経』を代表とする唐代初期の道教思想の特徴は、その前後の時期のそれと比較することによって、一層明確になる。その意味において、今年度、国際シンポジウムで発表した六朝時代の霊宝経を中心とする道教経典における仏教受容のあり方に関する研究や、則天武后期の道教についての研究も、重要であったと考える。
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