2002 Fiscal Year Annual Research Report
バルトリハリ言語哲学における「意味の世界」の分析と〈能力〉抽象の研究
Project/Area Number |
11610022
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Research Institution | HIROSHIMA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
小川 英世 広島大学, 大学院・文学研究科, 助教授 (00169195)
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Keywords | バルトリハリ / シャクティ / 能力 / 使役 / 促進 / 普遍 / 第一行為参与者 / 基体の実現 / 普遍 |
Research Abstract |
本年度は、バルトリハリの<能力>論に基づく行動論の解明を試みた。 以下の点が明らかとなった。 バルトリハリは,<手段>等の他の<行為参与者>を活動せしめるものである<行為主体>をさらに活動せしめる根源的な<行為参与者>として<活動>を措定し,それを「第一<行為参与者>」と呼んだ.この「第一<行為参与者>」は,<実体>としての<能成者>に先在するものであり,基体を持たないものであり,不滅なるものであり,普遍的なるものであり,<能力>を引き出すものである. 「第一<行為参与者>」としての<活動>の最も重要な特徴は,料理行為や切断行為等の特殊に個別化されるその普遍たる在り方にある.この在り方の故に,「第一<行為参与者>」は<行為>の実現を<行為主体>に促すものとなるのである. バルトリハリは,「普遍語意論」の見地から(「彼は瓶を作っている」)という表現の意味構造を分析し,「瓶」という名詞語幹が表示する瓶性という普遍は,自己の顕現のために個別的な瓶の作成行為に人を促し,そうすることによって自己の基体である個別的瓶を実現するという考えを表明している.これと同じことが「第一<行為参与者>」にも当てはまる.「第一<行為参与者>」は基体をもたない.したがってそれは自己の顕現のために自己の基体を求める.これが「第一<行為参与者>」が<行為主体>をして<行為>を実現せしめる構造である. この<活動>は<実体>としての<能成者>に先行してすでに存在する<行為>であり,自己の顕現のために自己の基体としての個別的<行為>を実現するために,<能力>の保持者である<実体>から<行為主体>として機能する<能力>を引き出す.このことは、「第一<行為参与者>」としての<活動>による個別的<行為>の実現への促進は,<能力>としての<能成者>の視点からのみ正当化される,ということを意味する.
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