1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11610023
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Research Institution | Aichi Gakuin University |
Principal Investigator |
蓑輪 顕量 愛知学院大学, 文学部, 助教授 (30261134)
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Keywords | 安居院 / 唱導 / 澄憲 / 輪法輪抄 / 経釈 |
Research Abstract |
本年度は、まず安居院の唱導資料及び唱導に関連する論議の資料の収集を行い、あわせて若干の研究成果を発表した。安居院の唱導は、法会という格式のある場で行われた記録であることが多いが、この法会に参加できる僧侶が限定されていたことなど、当時の寺院社会の実態を、良遍の『護持正法章』から明らかにした。鎌倉時代においては僧侶に貴種、良家、凡人等の区分が存在し、それらの身分階層が固定化していた。その出自によって出世の限界が存在したことなどを、スイスのローザンヌで行われた国際仏教学会(平成11年8月)で発表した。 安居院の唱導資料は、金沢文庫、東大寺図書館、比叡山文庫等に所蔵されているので、実際にそれらの機関に赴き、資料の閲覧を行った。そのうち安居院の唱導資料として代表的な『釈門秘鑰』『転法輪抄』や東大寺の唱導資料と考えられる『普通唱導集』等の複写を行った。また安居院澄憲の出仕が確認される論議資料である東大寺の宗性の手になる最勝講や法勝寺御八講の記録や、澄憲の手になると思われる資料の複写も併せて行った。 唱導資料の中には表白、諷堂、経釈などが含まれる。その経釈の部分に対して仏教学からの研究が可能であることを指摘し、また説話的な要素が含まれることを大倉精神文化研究所の研究会で発表した(平成12年2月)。なお、事例として挙げられる説話的な部分は、唱導と説話との関連を考える良い材料を提供してくれると思われる。以上、本年度の研究は、資料の収集に多くの時間を割き、若干の見通しを学会等を発表した。
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