2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11610023
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Research Institution | Aichi Gakuin University |
Principal Investigator |
蓑輪 顕量 愛知学院大学, 文学部, 助教授 (30261134)
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Keywords | 唱導 / 仏教説話 / 澄憲 / 遁世 / 法華経釈 / 釈門秘鑰 / 安居院 |
Research Abstract |
本年度は、まず院政期から鎌倉期にかけての寺院の教学的実態がどのようなものであったのかに関し、唱導という視点からまとめ、南アフリカで開催された世界宗教学会で発表した。寺院で行われる法会において、唱導と論義の両者が重要な教学的な部分である。現存する格式の高い法会の唱導や論議の資料の紹介、およびこれらの資料から推測される当時の状況について報告し、当時の学侶たちの仏教学の実際を把握することができると発表した。 次に、唱導資料と説話資料との関連性について論文をまとめた(『大倉山論集』)。院政期から登場する精神的な特徴として、遁世が注目されることを説話資料や唱導資料である表白文の文章から推測した。さらに、説話の成立そのものに唱導が深く関わると予測した。特に安居院の唱導の支持者たちは、澄憲の『作文大体』に登場する文言から想像すると、貴族階級に限定できる可能性があることを示唆した。 また、安居院の唱導資料である『釈門秘鑰』に収録されている経釈の研究を行った。院政期から鎌倉時代にかけて行われた法勝寺の御八講との関連が指摘される『釈門秘鑰』巻第十七に含まれる『無量義経』の経釈を翻刻し、その教学的な理解と御八講の論義で行われた教理論争との関連性を研究し、論文集に発表した(『田賀龍彦博士古稀記念仏教思想仏教史論集』)。結論として、法勝寺御八講の唱導の部分と論議の部分とに、教学的関連性を積極的に認めることは困難であり、唱導でなされた主張に基づいて議論が展開されているとは考え難いとの一応の結論を得た。また石山寺一切経蔵にも平安時代後期の唱導資料である『法華経釈』の写本が存在することを確認した。
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