2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11610023
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Research Institution | Aichigakuin University |
Principal Investigator |
蓑輪 顕量 愛知学院大学, 文学部, 助教授 (30261134)
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Keywords | 安居院 / 講経 / 唱導 / 澄憲 / 聖覚 / 釈門秘鑰 / 法華経釈 / 最勝経釈 |
Research Abstract |
前期には東大寺図書館所蔵の『法華経釈』及び『華厳経釈』の翻刻を行った。『法華経釈』は注釈学的研究も行い、印度学仏教学会で発表した(「東大寺所蔵『法華経釈』について」)。東大寺所蔵「法華経釈」は三論宗の吉蔵の『法華義疏』に基づくことを明らかにし、本経釈は東南院系の僧侶によって作成された可能性が高く、各宗毎に拠り所とした注釈書が異なることが確認されると報告した。次に安居院の澄憲が編纂した資料である『釈門秘鑰』の経釈に関わる部分である巻20、21等の翻刻の作業を行った。 後期は全体の総括をすべく、論文を執筆した。まず中国の古代における講経の歴史を概括し、講経で行われる開題部分の三門分別が日本の唱導で行われる経釈の三門分別に繋がるものであることを明らかにした。また日本における講経の伝統と唱導との関連について言及し、中国の都講を日本では読師が担い、11世紀頃より唱導が注目されるが、安居院が注目されるようになった所以は、偏に澄憲が文章を残そうと精力的に努めたことによると推定した。また『釈門秘鑰』の経釈の翻刻からは「最勝王経釈」「寿命経釈」「本願薬師経釈」等の研究を行った。最勝王経釈は『最勝王経』の文章にほぼ則った形の経釈が作られるが、参照されたものは智〓の『金光明経玄義』『金光明経文句』であることを明らかにした。最終的に『釈門秘鑰』に収載される澄憲の文章は彼が名文であると位置づけたものが集成され、『転法輪妙』はその他、彼が集成した多くの法会に関する資料の集成であり、『言泉集』は典拠を明らかにし文章の製作の便になるよう作成した資料集であろうと推定した。なお経釈の研究からは澄憲はあくまでも中国天台の枠内で言及することが知られた。安居院唱導資料は文学的には優れたものであり、そこに展開される教学は天台の基本的な伝統教学であるとの結論を得た。
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