2002 Fiscal Year Annual Research Report
マヤ・カトリック社会の時間・空間感覚と社会構造の分析
Project/Area Number |
11610030
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Research Institution | MIYAZAKI MUNICIPAL UNIVERSITY |
Principal Investigator |
中別府 温和 宮崎公立大学, 人文学部, 教授 (00155805)
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Keywords | マヤ / カトリック / 時間感覚 / 空間感覚 / 社会構造 / 擬制的親子関係 / エヒード / 宗教文化 |
Research Abstract |
本年度は、これまでの研究成果をまとめて調査報告書を作成し、公表する作業を中心に調査研究を進めた。具体的には、調査地マニにおいて、時間感覚および空間感覚に関して蒐集した300の作文資料(有意味写真への反応)と、社会構造について蒐集した教会史料(洗礼、聖体拝領、15歳の祝い、婚姻に関する本人名、本人の両親名、擬制的親名の記録等)の分析内容を集約する作業を行った。分析の方法は、有意味写真への反応の内容分析と、中央演算処理装置による統計的分析(言語分析プログラム Corpus Wizard Ver.1 06F for Win32など)を中心とする。 従来の調査結果に加えて、今年度新しく取り出した調査結果の概要は次のとおりである。 人々の空間感覚には洞窟とセィバの木をめぐるマヤ因子が残存している。教会を最も高く、次に住居空間、最後に仕事空間を価値づけていくヨーロッパ的空間感覚とともに、洞窟とセイバの木を中心とするマヤ的空間感覚が共存している。洞窟は特に神々や悪魔の居所として、またセイバの木はシタバイ(女悪魔)の住居として、口頭伝承で語られてきている。また、現在でもマニの人々の現実の生活場面で重要な意味を保っている雨乞い儀礼には、五方神の感覚が色濃く厳存している。また、マニの人々は自分の身辺から遠方に向かって住居空間(ソラール)→私有地→共有地(エヒード)という空間感覚も維持してきている。これは、革命によってもたらされた現代的な土地分割である。それぞれの土地について細かな調査を行った結果、エヒードに関してはマヤの非合理的な宗教的思考とは異なり、徹底した合理的な思考が支配的である。調査地マニの宗教文化は、現実には、マヤ的な太古の因子とヨーロッパ的因子からなる複雑な複合体であり、また非合理的な側面を含む宗教的な因子と合理性が支配する政治経済的な因子からなる複雑な複合体なのである。
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[Publications] 中別府 温和: "Ritual Kinship and ejido in a Mayanyucatecan Catholic Community, Mani"Bulletin of Miyazaki Municipal University. Vol.9. 217-233 (2002)
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[Publications] 中別府 温和: "洗礼とプリメーラ・コミュニオンと婚姻に関する教会史料"マニ教会関係史料. 1-170 (2002)
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[Publications] 中別府 温和: "「福祉とボランティアの精神と活動-インドとメキシコの事例を中心に-」『ボランティア・NGO・NPO-支え合いの姿と心-』"宮崎公立大学(所収). 1-25 (2003)