2000 Fiscal Year Annual Research Report
道徳的相対主義に関する基礎研究-18世紀フランス思想史を中心に
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11610033
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
古茂田 宏 一橋大学, 大学院・社会学研究科, 教授 (80178376)
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Keywords | 相対主義 / 普遍主義 / トドロフ / ルソー / 社会契約論 / エミール / リバータリアニズム / コミュニタリアニズム |
Research Abstract |
本年度も昨年度の研究を受けて、基本的なテキストの収集と読解を引き続き行った。すなわち、トドロフの大著(未邦訳)『我々と他者-人類の多様性に関するフランス人の考察』の第1部「普遍的なものと相対的なもの」に即しながら17世紀-18世紀思想史を読み直した昨年に引き続き、本年度においては特に18世紀思想史における一つの大きな転換をなすルソーの読解、そしてこのルソーから流れ出る二つの相反する19世紀の潮流の概観を行った。(これに際しても、トドロフ前掲書第3部「国民」に展開された、フランス人権宣言から19世紀フランス帝国主義・植民地主義にいたる皮肉な因果関係についての考察が有益であった。)ルソーについては、1862年にほぼ同時に出版された二つの主著、きわめて普遍主義的でコスモポリティズム的な志向をみせる『エミール』と、排外主義にも繋がるような断固たるパトリオティズムを強調する『社会契約論』を、その両者の緊張した理論空間の関係に着目しながら再読・精読できたことがとりあえずの成果である。(後者については、その反普遍主義的な論理が一層強烈に押し出される『ポーランド統治論』をも視野に収めた。)なお18世紀思想史研究とは一応独立の問題ではあるが、今年度からはじめられた一橋大学大学院社会学研究科の総合研究プロジェクトに参加した関係で、現代の北米を中心としたリバータリアニズム・コミュニタリアニズムの論争をフォローしたことと、その思想的緊張関係が現代の我が国においてはどのような姿をとって現れているかを研究したことも、本研究と密接な連関をもっている。言うまでもなく、リバータリアンとコミュニタリアンの論争は、普遍主義と相対主義(多元主義)という対立図式の射影関係にあると言える。これについては、同プロジェクトのリサーチペーパーとして論文が発表されている。
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Research Products
(1 results)