1999 Fiscal Year Annual Research Report
倫理の存在論的基礎付けをめぐって-「自然」「自由」「責任」の概念の思想史的研究
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11610034
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Research Institution | Toyama Medical and Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
盛永 審一郎 富山医科薬科大学, 薬学部, 助教授 (30099767)
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Keywords | physis / natura / creatio / menschliche Freiheit / Ontologische Freiheit / Fursorgeverantwortung / Haftung / Handlungsverantwortung |
Research Abstract |
1)自然の概念について。 本年度の研究課題の一つは、思想史をたどりながら自然概念について考察することであった。その結果、自然は、一様ではないということ、また自然そのものというものはないということ、"physis","natura","creatio"としてわれわれに対して姿を現し、語られるものであるということが明らかとなり、それぞれの特徴について考察した。特に、デカルト的な機械論的自然に対し、シェリングの有機体的な自然概念について注目し、「無底」について考察した。 2)自由の概念について。 ヤスパースの自己存在としての自由の概念とハイデッガーの存在論的な、真理論的な自由の概念の対比を行うことが今年度の課題の一つであった。両者が共通のテキストとして考察しているシェリングの『人間的自由の本質』を媒介として、解明することを試みた。その結果、ハイデッガーがシェリングの自由の概念を継承し、ヤスパ一スはカントの自由の概念を継承するということが明らかとなり、両者の問題視点を浮き彫りにすることができ、さらにそこから両者の哲学に対する態度の相違の把握へ入ることができた。この自由の概念が、1930年代の大学改革における両者の自由に対する把握の相違となっていることも明らかとなった。そして、ヨナスのいう「存在論的自由」がハイデッガーの自由の概念上に位置しているということを明らかにすることができ、さらにヨナスの命題"ich soll,denn ich tun,denn ich kann"の意味も、シェリングの自由の概念から新たに解釈することができた。 3)責任の概念について。 ヨナスの責任概念について整理し、さらにヤスパースの責任概念、及びレンクの責任概念を考察した。ヤスパースの責任概念の一つとして新たに、Haftung(政治的責任)ということを取り出すことができた。レンクの責任概念として挙げられている、Handlungsverantwortung(行為責任)、Rollen-und Aufgabenverantwortung(役割-課題責任)、Universalmoralische Verantwortung(普遍道徳的責任)、R echtliche Verantwortungのそれぞれについて考察した。
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Research Products
(1 results)