2000 Fiscal Year Annual Research Report
倫理の存在論的基礎付けをめぐって-「自然」「自由」「責任」の概念の思想史的研究
Project/Area Number |
11610034
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Research Institution | Toyama Medical and Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
盛永 番一郎 富山医科薬科大学, 薬学部, 助教授 (30099767)
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Keywords | Teleologie / Zweckhaftigkeit / Zweckmaβigkeit / Ontologie / Sorge / bedurftige Freiheit / Typen der Verantwortlichkeit / Verantwortunqs polaritaten |
Research Abstract |
今年度の研究実施計画のうち、主として次の考察に従事した。(1)倫理の存在論的基礎付けをめぐって、目的論について考察した。N・ハルトマンの著書"Teleologisches Denken"を底本にして目的論の三つの形式(過程の目的論、形式の目的論、全体の目的論)を思想史的に考察するとともに、ヨナスの目的論のタイプについて考察し、また目的論が導入される必然性について考察した。それは、「自由」の概念を倫理の根底においた場合、「自由」と「自然」、「内面性」と「身体束縛性」を如何にして両立させるかが問題となるからである。カントは、自然の「合目的性」という概念を導入し、自然と自由を超越論的に両立させることを試みた。一方、ヨナスは自然存在の「有目的性Zweckhaftigkeit」という概念で存在論的に基礎づける。そこで、カントとヨナスのこの相違について考察し、ヨナスの思想へのハイデッガーの存在論の影響を取り出した。(2)従って並行して、かかるヨナスの「有目的性」の概念を明らかにするために、ハイデッガーとヨナスの思想の関連について考察した。人間の現存在は「関心Sorge」であるというハイデッガーの存在論的範疇をヨナスは生命の全領域へと拡大し、目的論的自然理解を展開する。有機体は、質料との同一性から自己を解放し自由をその存在論的構造とするが、それは死の可能性に面し、世界へ未来へ関係し自己維持を目的とする「困窮する自由」であるということが明らかとなった。(3)また、「責任」の概念について、主としてH・レンクに従い、責任の概念の分類、対立の理念型、優先順位について、2000年度に引き続き考察した。責任は2項以上の関係概念であり、少なくとも5項から成り立つと言うこと。すなわち、誰かが、誰かに対してgegenuber、何かのためにfur、ある審判に面してvor、ある基準に関してin bezug auf。また、対立項としては、規範的-記述的、消極的-積極的、過去に向けられている-未来に向けられている、原理に定位した-結果に方向付けられた、など26項目あるということ、さらに、その優先関係などを考察した。
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Research Products
(1 results)