2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11610035
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
遠山 敦 三重大学, 人文学部, 助教授 (70212066)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小川 眞里子 三重大学, 人文学部, 教授 (00185513)
山岡 悦郎 三重大学, 人文学部, 教授 (90115741)
伊東 祐之 三重大学, 人文学部, 教授 (50011359)
久間 泰賢 三重大学, 人文学部, 講師 (60324498)
片倉 望 三重大学, 人文学部, 教授 (70194769)
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Keywords | 情 / pathos(passion,Leidenschaft) / 道徳感情 / 理 / logos |
Research Abstract |
本研究は東西を問わずさまざまな形で論じられてきた人間存在における「情」に関し、その構造と倫理的意義とを明らかにしようとするものである。研究最終年度にあたる平成13年度は、前年度展開した原理的な考察、即ち研究分担者による個別研究を包括する「情」のより原理的な理解とその倫理的意義の考察を、再び個々の研究者の個別問題領域へフィードバックさせることを通じて全体を俯瞰し統合する視点を個別に検証することに努めた。それを通じて得られた新たな知見あるいは問題意識として、主に以下を挙げることができる。 1.西洋哲学において情と理の二元的対立は一般にプラトニズムの系譜に帰せられるが、プラトン自身によれば、両者はともに自らに欠如するものを満たそうとする魂の自然本性に根拠づけられたもの、即ちその生い立ちを同じくするものであるとされる。情と理とを対立関係の内に捉えるとされるストア派やカント主義の立場も、人間の「自然」性の観点からその情-理関係が再検討されるべきである。 2.日本近世の古学運動は、宋学的な理を「死字」あるいは「なまさかしら」として批判すると同時に、活動態としての情動により大きな価値を与えた。だがそれは理一般の否定ではなく、情動に基づく四端こそが人々の共同という真実態を成立させ、あるいは「あはれ」という情動によってのみ存在の真実相が感知・把握されるとするものであり、そこに理あるいは知と情との関係に対する根源的な反省を見て取ることができる。 3.1・2に典型的に見られるように、情への注目は、動的かつ被制約的な有限者としての人という観点を確保することを通じて、静態的かつ無制約的と考えられている理やそれを把握するものとされる知に対して、その様態そのものに根本的な反省を促すものである。
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Research Products
(12 results)
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[Publications] 遠山敦: "伊藤仁斎の「情」理解"三重大学哲学思想学系・教育学部哲学倫理学教室編『論集』. 10. 146-169 (2002)
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[Publications] 伊東祐之: "感情のあり方-哲学史の場面から-"三重大学哲学思想学系・教育学部哲学倫理学教室編『論集』. 10. 30-41 (2002)
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[Publications] 山岡悦郎: "情緒主義の擁護"三重大学哲学思想学系・教育学部哲学倫理学教室編『論集』. 10. 42-55 (2002)
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[Publications] 小川眞里子: "情動表出の進化"三重大学哲学思想学系・教育学部哲学倫理学教室編『論集』. 10. 56-73 (2002)
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[Publications] 片倉望: "荘子の欲望論-竅の解釈を通して-"三重大学哲学思想学系・教育学部哲学倫理学教室編『論集』. 10. 127-145 (2002)
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[Publications] 久間泰賢: "説一切有部における心と心所の概念について"三重大学哲学思想学系・教育学部哲学倫理学教室編『論集』. 10. 119-126 (2002)
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[Publications] 松井良和: "情と理と自然"三重大学哲学思想学系・教育学部哲学倫理学教室編『論集』. 10. 1-16 (2002)
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[Publications] 武村泰男: "情と意味連関"三重大学哲学思想学系・教育学部哲学倫理学教室編『論集』. 10. 17-29 (2002)
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[Publications] 桑原直己: "西洋古代・中世キリスト教倫理思想における「情」の意味-「憐れみmisericordia」の概念を中心に-"三重大学哲学思想学系・教育学部哲学倫理学教室編『論集』. 10. 74-90 (2002)
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[Publications] 秋元ひろと: "ホッブズの「好奇心」論"三重大学哲学思想学系・教育学部哲学倫理学教室編『論集』. 10. 91-106 (2002)
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[Publications] 蔵田伸雄: "道徳的葛藤における「情」と「理」"三重大学哲学思想学系・教育学部哲学倫理学教室編『論集』. 10. 107-118 (2002)
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[Publications] 山岡悦郎: "情の探究"三重大学出版会. 160 (2002)