1999 Fiscal Year Annual Research Report
コミュニケーション理論を軸とする実践哲学の可能性についての研究
Project/Area Number |
11610038
|
Research Institution | Kumamoto Gakuen University |
Principal Investigator |
霜田 求 熊本学園大学, 経済学部, 助教授 (90243138)
|
Keywords | コミュニケーション / 討議 / 規範 / 法哲学 / 法と道徳 / 公共的自律 |
Research Abstract |
今年度は、研究課題に取り組む基礎作業として、コミュニケーション理論(討議理論)の規範的意義および実践的射程を明らかにしながら、法・道徳・倫理・政治という実践哲学の基本的枠組みを整理し、下記の通りその成果を公表した。 1.法哲学で論じてきた「法と道徳」という主題を手がかりに、主に法実証主義と自然法論の論争を点検しながら、その対立図式を超出する新たな視角を提示した。それは、J・ハーバーマスとR・アレクシーの「討議理論」の中で展開された、規範の正当性をめぐる意見・意思の形成および決定プロセル(=実践的討議)に定位する見地である。規範が義務づける拘束力を持つ規範として妥当するのは、つねにそのつど設定される討議の中で正当化されることによってである、というのがその骨格をなす。(西日本哲学会第50回大会研究発表「討議理論における法と道徳」、論文「実践的討議の道徳性-ハーバーマスとアレクシーを手がかりにして-」) 2.現代政治理論の主要な潮流を形づくるリベラリズム、共同体論、デモクラシー論について、規範と価値、正(正義)と善(善き生)、普遍主義と多元主義といった二項関係に即してそれぞれ検証した上で、実践的事柄における政治的文脈の基底的意義を証示した。コミュニケーションと権力の関係を軸に政治という位相を解明し、そこから個人主義的な私的自律に代わる公共的自律の可能性を示唆する。(論文「コミュニケーションと道徳・倫理・政治-公共的自律の可能性-」:『コミュニケーション理論の射程』所収)
|