1999 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀前半における「危機」と「脱=近代」をめぐる諸言説に関する総合的研究
Project/Area Number |
11610043
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
上野 成利 京都大学, 人文科学研究所, 助手 (10252511)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森本 淳生 京都大学, 人文科学研究所, 助手 (90283671)
安田 敏朗 京都大学, 人文科学研究所, 助手 (80283670)
小林 博行 京都大学, 人文科学研究所, 助手 (00293952)
細見 和之 大阪府立大学, 総合科学部, 講師 (90238759)
崎山 政毅 神戸市外国語大学, 外国語学部, 助教授 (80252500)
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Keywords | 危機 / 脱-近代 / 近代の超克 / 戦間期 / 1930年代 |
Research Abstract |
1 今年度の研究会で取り上げたのは、田辺元、戸坂潤、下村寅太郎、和辻哲郎、九鬼周造、中井正一、小林秀雄、竹内好、武田泰淳、柳宗悦、柳田国男、時枝誠記、加藤正、南原繁、島恭彦、マンハイム、フランクフルト学派、カール・シュミット、シュペングラーらのテクストである。きわめて多様な領域にわたるこれらのテクスト群は、政治的には体制派/反体制派、あるいは保守/リベラルといった軸で区別することもできるだろうが、しかし一連の検討作業をつうじて浮かび上がってきたのは、そうした対立軸を越えた思考の通底性である。 2 たとえば、「種の論理」を持ち出しながら民族共同体論を展開した田辺元の哲学は、リベラル派と目される南原繁によって国家主義的な思想として批判されたが、しかし南原の政治哲学自体、個人の自由から出発しながらも最終的には民族共同体の建設を強く求めるものであった。南原はフィヒテの国民論に依拠しながら、ある部分では京都学派と重なりあうような議論を展開していたともいえる。狭い意味でのイデオロギー批判とは異なった視点からこの時期のテクスト群を読み解く必要があるということ、これがさしあたり確認できた事柄である。 3 本研究はもともと対象を特定の地域に限定せず、世界史的同時性を視野に収めながら広い範囲でテクストを渉猟し、それらを比較検討することをめざしていた。しかし検討作業を積み重ねてゆくにつれて、焦点は次第に戦間期日本に絞られてきた。この時期の日本のテクストにはさまざまヨーロッパ思想が流れ込んでいるが、その受容の過程でヨーロッパ的思惟のはらむ問題性がより純化されたかたちで現われてくることが確認できたからである。来年度は戦間期日本のテクストにより重心を置きながら検討作業を進めてゆきたいと考えている。
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Research Products
(13 results)
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[Publications] 上野 成利: "家族の政治学-フランクフルト社会研究所の『権威と家族』研究"人文学報(京都大学人文科学研究所). 第83号. (2000)
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[Publications] 森本 淳生: "「危機」のディスクール-ヴァレリ-と「ヨーロッパ精神」の危機"仏文研究(京都大学ブランス語学フランス文学研究会). 第30号. 165-184 (1999)
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[Publications] 森本 淳生: "ポール・バレリーと表象=代理の「危機」"人文学報(京都大学人文科学研究所). 第83号. (2000)
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[Publications] 安田 敏朗: "「方言」の語り方と植民地-大東亜省調査官・寺川喜四男の場合"思想(岩波書店). 第899号. 112-128 (1999)
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[Publications] 安田 敏朗: "戦争と地名-「大東亜戦争」の場合"ことばと社会(三元社). 第1号. 60-77 (1999)
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[Publications] 細見 和之: "『コギト』以前,あるいは竹内好と安田與重郎"レヴィジオン. 第2号. 141-158 (1999)
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[Publications] 細見 和之: "詩のミニマ・モラリア-小野十三郎の『詩論』をめぐって"樹林(大坂文学学校・葦書店). 第421号. 53-60 (2000)
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[Publications] 崎山 正毅: "自然発生省とサレベルタン・ポリティクス"現代思想(青士社). 27巻・4号. 246-257 (1999)
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[Publications] 崎山 正毅: "モノグラフの転位"立命館言語文化研究(立命館大学). 11巻・1号. 101-113 (1999)
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[Publications] 小林 博行: "聞きなしの成立"人文学報(京都大学人文科学研究所). 第83巻. (2000)
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[Publications] 安田 敏朗: "<国語>と<方言>のあいだ-言語構築の政治学"人文書院. 412 (1999)
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[Publications] 細見 和之: "アイデンティティ/他者性"岩波書店. 121 (1999)
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[Publications] 小林 博行: "食の思想-安藤昌益"以文社. 201 (1999)