2000 Fiscal Year Annual Research Report
ナショナリズムと近世儒教-「自国意識」をめぐる日朝比較思想史
Project/Area Number |
11610044
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Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
樋口 浩造 愛知県立大学, 文学部, 助教授 (30243140)
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Keywords | ナショナリズム / 武士道 / 自国意識 / 士道論 / 井上哲次郎 / 和辻哲郎 / 葉隠 / 死か美学 |
Research Abstract |
本年度前半は、近世後期の儒学がナショナルなものに再編成されていくことを寛政期を軸に追おうとした。初めて手をつける領域であり、この時期の諸思想家たちの基本的テクストの収集と濫読という基礎的な研究に終始した。 またこの作業と併行して、「武士道」の考察を行った。江戸期の武士道、近代日本の帝国形成期に発見された日本文化としての武士道、そして現在にまで続く総力戦期の死の美学としての武士道、の大きく三つに分けて把握しようとした。このことを通じて、近代ナショナリズムの編成様式の一端を解明しようとしている。前期に経済思想研究会、後期に日本思想史学会でそれぞれ「武士道」についての学会報告を行い、現在論文としてまとめる作業中である。特に「武士道」は過去のものではなく、生き様と死に様の美学の問題として現在にまで継続する問題であることが明らかにしてきた。 もう一点予定していた、近世の自国意識の把握については、ほとんど手をつけられなかった。次年度の中心的研究課題としたい。
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