2000 Fiscal Year Annual Research Report
音楽のナショナリズム:中欧各国におけるその現象形態
Project/Area Number |
11610049
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
伊東 信宏 大阪教育大学, 教育学部, 助教授 (20221773)
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Keywords | ロマ(ジプシー) / クレズマー / モルドヴァ / シャガール / クンデラ / コダーイ / 楽師 |
Research Abstract |
本研究は、20世紀前半の音楽的ナショナリズムを研究対象としているが、本年度はその第二年にあたる。研究の過程で、とりわけ重要な論点として浮かび上がってきたのは、国民国家形成の時期に重要視された各国単位の民俗音楽、国民音楽の背後に、民族や国家を超えて拡がるトランス・エスニックな器楽がどのように作用したか、というものである。これは具体的には、昨年度の研究に着手したロマ(ジプシー)やユダヤのクレズマーの音楽を指すのだが、本年度も引き続きこれらの器楽と、各国の民俗音楽あるいは芸術家たちとの関係について研究を進めた。 まず年度前半は、昨年行った現地での調査をもとに、比較的大きな論文をまとめた。本報告書中11.研究発表の〔図書〕の項目に挙げた論文がそれで、ここではまずハンガリーの作曲家、民俗音楽研究者であったZ.コダーイの著作と、モラヴィア出身の小説家M.クンデラの記述の比較、さらにはトランス・エスニックな音楽の実例としてのモルドヴァのブラス・バンドの音楽の検討などを行った。また12月には、中・東欧のユダヤ人たちの民俗的器楽奏者であったクレズマーに関する調査のためにニューヨークのユダヤ研究センター(YIVO)を訪れ、その成果をもう一つの論文(11.研究発表中の最初の論文)にまとめた。これはベラルーシのユダヤ人社会の出身である画家、M.シャガールの絵に登場するヴァイオリン弾きとクレズマーとの関係について論じたものである。次年度もこれらの研究を続け、最終的には著作をまとめたいと考えている。
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