2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11610050
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
岡田 暁生 神戸大学, 発達科学部, 助教授 (70243136)
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Keywords | オペラ / 映画 / 時事オペラ / 新即物主義 / モンタージュ |
Research Abstract |
本年度は1920年代のドイツ・オペラの作劇術を、映画のそれと比較することを試みた。1920年代のドイツ・オペラの創作潮流は、大きく次の二つの対立する試みに分けることが出来る。一方は現代人の日常生活を描く時事オペラ(ヒンデミットやクシェネクら)であり、他方は19世紀のワーグナー楽劇やグランド・オペラの延長線上にある諸作品(シュレーカー、コルンゴルト、ベルクら)である。そして新即物主義が音楽創作/演奏の主流とされた当時において、いまだに19世紀風の「ロマンティックなオペラ」の理念をひきずっていたシュレーカーやコルンゴルト(時としてベルクにさえ)は、しばしば「時代遅れ」という批判を受けた。しかしながらこれらの作曲家の作品は、その作劇術を見る限り、新即物主義的な潮流に乗った時事オペラといくつかの注目すべき共通点を示している。それは「映画的なオペラ作劇術」である。「幕」ではなく短い「場面」を作劇の単位とすること、音楽および台本のモンタージュやスナップショット的な効果、回想場面の多用などがそれである。事実ベルクやヒンデミットは映画に強い興味を示し、またコルンゴルトは後にハリウッドに渡って映画作曲家として名をなすことになった。こうしたオペラと映画の相互の影響関係をより精緻に調査することが今後の課題である。
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