2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11610065
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Research Institution | Tokyo National Museum |
Principal Investigator |
金子 啓明 独立行政法人国立博物館東京国立博物館, 企画部・事業課, 課長 (90110098)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩佐 光晴 独立行政法人国立博物館東京国立博物館, 学芸部・美術課・彫刻室, 室長 (10151713)
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Keywords | 神楽 / 神仏習合 / 醍醐寺 / 聖宝 / 十一面観音像 / 天神の本地仏 / 立川不動尊 / 霊木信仰 |
Research Abstract |
今年度は、調査対象を8・9世紀から10・11世紀の木彫像まで広げ、さらに鎌倉時代の作例も含む神像及び神仏習合関連の木彫像の調査を行った。特に、本研究の代表者及び分担者が所属する東京国立博物館で開催された三つの特別展、「国宝醍醐寺展」、「天神さまの美術」、「美術の中のこども」には本研究の対象となる作例が多く出品され、研究を進めていく上で極めて有効であった。その他関連作品を収蔵する寺院や博物館等でも調査を実施した。 主な調査作品は、醍醐寺(京都府)の薬師三尊像、聖観音立像、帝釈天騎象像、道明寺(大阪府)十一面観音立像、廣智寺(大阪府)不空羂索観音立像、大報恩寺(京都府)千手観音立像、立川不動尊(山梨県)不動明王坐像、神像としては、上野神社(滋賀県)男神坐像、観音寺(京都府)男神坐像、高田八幡神社(愛媛県)童形神立像、荏柄天神社(神奈川県)天神坐像及び立像、神仏習合関係では、川原観音堂(滋賀県)十一面観音立像、大野神牡(滋賀県)十一面観音立像、比良天満宮(滋賀県)天王立像、長安寺(大分県)太郎天及び両脇侍立像などである。 本年度の調査を通じて特に注目された点を摘記すると以下のようである。まず、醍醐寺の上記作品は同寺を創建した聖宝と関連する像と考えられ、檀像にも深い理解を示した聖宝の木彫観を究明する上で重要な作例であることがあらためて認識された。また、十一面観音像は天神の本地仏として菅原道真関係の寺院に祀られたが、現存する像には檀像風の作例が多く見られる点は注目され、檀像認識の広がりを考えるための有効な視点となるように思われる。さらに立川不動尊の不動明王像は丈六の巨像であるが、頭体幹部をウロのある一木で造っており、霊木信仰を背景にもつ作例として注目される。 なお、上記作例のうち可能な作例に限って用材のサンプル採集を行い、現在、森林総合研究所に樹種の同定を依頼している。
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