Research Abstract |
本年度は,3〜6歳の健常児を対象に,心の理論,能動・受動文理解,およびメタ言語的知識の発達を検討した。 心の理論は,標準的誤信念課題である予期せぬ場所の置き換え検査により,移動された物の場所に関する登場人物の誤った信念を推測してもらった。文理解は,態(能動・受動),文意のもっともらしさのバイアス(可逆・可能・不可能),および可能文と不可能文における文意のもっともらしさの程度(高・低)の3要因の組み合わせからなる12条件を操作した。各2文ずつ計24文を提示して,被験児に玩具で演じてもらった。また,メタ言語的能力の検査は,語音の異同を問うしりとり,無意味綴りに置き換えられた名詞の指示内容の正誤を問う語の置き換え,主語と目的語に続く文末の用言が適切か否かを問う文末語の訂正の3つの下位検査を行った。 実験の結果,誤信念の正解者は,5歳以降に7割を越えることから,心の理論が5歳以降に獲得されることが示された。また文理解では,6歳児が態とバイアスに関わらず遂行が優れたのに対して,3歳児はこれらの要因に関わらず理解が非常に劣っていた。さらに,4歳児では可能文が不可能文よりも有意に優れ,この年齢の子どもが,態に関わらず文意が示す事象のもっともらしさによって文を理解していることが示された。さらにメタ言語的知識では,3つの下位検査を通じて,5歳までは6〜7割程度の正答率にとどまるのに対して,6歳ではほぼ完全に正答できることが示された。また,4歳までにいずれの下位検査についても通過できる子どもは3割以下と少なく,5歳では個々の検査は通過できるもののすべての検査を通過できる子どもは2割しかいないのに対して,6歳児は9割以上の子どもがすべての検査を通過できることから,4歳まではメタ言語的知識を獲得していないが,5歳頃から獲得が始まり,6歳になるとほぼ完全に獲得することが明らかになった。
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