2001 Fiscal Year Annual Research Report
健常児および自閉症児における心の理論と言語能力ならびに実行機能との関係
Project/Area Number |
11610072
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Research Institution | Joetsu University of Education |
Principal Investigator |
内藤 美加 上越教育大学, 学校教育学部, 助教授 (00212077)
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Keywords | 心の理論 / 表象変化 / 知識の情報源 / 出典記憶 / 作業記憶 / 自由再生 / 自己体験的意識 / 前頭葉機能 |
Research Abstract |
本年度は,健常な4(8160)167歳児計89名を対象として,心の理論と実行機能の記億の発達的関係を検討した。心の理論は,標準的な誤信念課題の場所の移動検査と見せかけの外見検査により,他者および自己の誤信念の理解を、また知識の由来検査により,物の色や材質に関する知識に必要な感覚情報源の理解を調べた。実行機能の記憶では,出典記憶,時間的順序の記憶,ならびにリスニングスパンによる作業記憶を測定し,あわせて伝統的な自由再生と手がかり再生検査も行った。 実験の結果,心の理論課題はいずれも欧米の先行研究で報告されているよりも成績の向上が鈍く,6歳児でも誤信念理解は約7割,知識の由来の理解は5割半の成功率にとどまった。一方,出典記憶では,4歳児は,学習項目を正しく再生できるにもかかわらず,項目の学習文脈を特定できない未知情報獲得エラーと,学習段階ですでに知っていた既有知識の獲得文脈を特定できない既有知識獲得エラーが非常に高くかった。これらのエラーは7歳までに著しく減少し,出典記憶が4(8160)167歳の間に発達することが示された。時間的順序の記憶,作業記憶,および自由再生の能力は,全体として同じ時期に向上するものの,たとえ4歳児でも出典記憶エラーのような床効果を示すわけではなかった。さらに,心の理論と記憶との関連を年齢と言語年齢を統制した偏相関で検討したところ,特に外見検査の誤信念理解が出典記憶の未知情報獲得エラーと,知識の情報源の理解が同じく既有知識獲得エラーと有意な負の相関を示した。さらにこれらの心の理論の成績は,自由再生とも有意な相関を示した。また特に出典記憶の未知情報獲得エラーは自由再生と有意に相関した。したがって,心の理論は一様にすべての実行機能の記憶と関連するわけではなく,特に自己体験的意識という点で,表象の変化と知識の情報源の理解が出典記憶のエラーや自由再生の能力と関連していることが示唆された。
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Research Products
(1 results)