2002 Fiscal Year Annual Research Report
性・体発達に影響するストレスの季節性・耐性・メラトニンについての条件分析
Project/Area Number |
11610076
|
Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
井深 信男 滋賀大学, 教育学部, 教授 (70110757)
|
Keywords | ストレス耐性 / 豊環境 / シリアンハムスター / 精巣 / 体重発達 / 季節性 |
Research Abstract |
環境の豊富化が脳重量を増大させ、学習行動をはじめとして諸種の行動を促進することが知られている。このことから、豊かな環境で育った個体はストレスに対する耐性が増強することが期待される。本年度は、シリアンハムスターにおいて、短日環境下で餌のランダムな剥奪というストレスを与えたとき、精巣と体重に与える影響を、豊かな環境で育った個体と、通常の飼育環境下で育った個体を比較し、上記の仮説を検討した。 長日下で10週間飼育した後、動物を短日に移行し、同時にランダムに餌を剥奪するストレスを12週間にわたって与え、体重と精巣発達に与える効果を調べた。環境の豊富化は、飼育ケージ内に回転輪、はしご、L字型の遊具を導入することによって、はかられた。実験デザインは(1)遊具+剥奪なし(PC群)、(2)遊具+剥奪(PD群)、(3)遊具なし+剥奪なし(NPC群)、(4)遊具なし+剥奪(NPD群)の4群で、剥奪は実験日の30%の日の餌のランダム剥奪であった。 実験の結果、遊具が無く餌を剥奪されたNPD群において、例外なくすべての個体の精巣は抑制された。他の3群では個体によるバラツキが見られたが、遊具があり剥奪のないPC群において、精巣が大きい個体が多く出現した。分散分析の結果、剥奪の主効果に有意差が見られ、剥奪というストレスは精巣発達を抑制し、遊具の存在がストレスを緩和する傾向が見られた。 一方、体重発達を見ると、環境の豊富化により体重は有意に重くなった。また、剥奪によるストレスを環境の豊富化は緩和し、遊具の存在したPD群の体重は統制群のNPD群に比べ、餌剥奪による抑制を減少させた。 以上のように「環境の豊富化は体重と精巣発達を促進し、餌剥奪に由来するストレスを緩和する」との仮説は裏付けられたと言える。
|