1999 Fiscal Year Annual Research Report
視覚探索におけるワーキングメモリの機能に関する心理生理学的研究
Project/Area Number |
11610080
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
宮谷 真人 広島大学, 教育学部, 助教授 (90200188)
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Keywords | 視覚探索 / ワーキングメモリ / 事象関連電位 / 音韻ループ / 視覚性ワーキングメモリ |
Research Abstract |
視覚探索におけるワーキングメモリの機能について,音韻ループに干渉する副課題が視覚探索時の事象関連電位(ERP)に及ぼす影響,および,言語化しにくい視覚対象の探索時に記録されるERPの特徴,の2つの点から検討した。まず,健常成人を対象として,視覚探索課題遂行時のERPを記録した.探索課題を単独で行う場合と,同時に暗算課題を行う場合で,課題の難易度(記憶負荷および視覚負荷)に伴うERP波形の変化の仕方を比較したところ,以下のことがわかった.探索課題単独の場合には,記憶負荷の増加も視覚負荷の増加も同じようなERP変化をもたらした.暗算課題の導入は,視覚負荷効果には影響せず,ERPへ及ぼす記憶負荷効果のみを増大させた.これらの結果から,視覚探索がワーキングメモリの複数の下位過程に支えられていること,複数の下位過程の機能的関係は固定的なものではなく,課題の性質によって変化するものであることがわかった.今後は,音韻ループに干渉する別課題を用いて結果の再現性を確認するとともに,音韻ループではなく視覚性ワーキングメモリに干渉する課題を同時遂行した場合のERP変化について検討する。 次に,言語化しにくい色パッチを用いた探索課題をおこなった.刺激として文字を用いた課題と比べると,課題の難易度の操作(記憶負荷の増加)にともなうERP変化の様子が異なり,一貫した負荷効果が出現しなかった.結果の再現性や他種の視覚刺激を用いた場合について未検討なので,結論を導くには尚早であるが,文字の音声コードを処理する音韻ループと,他の下位システムでは,負荷の増加への対応の方法が異なることを示唆する結果である.
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