2000 Fiscal Year Annual Research Report
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11610094
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Gerontology |
Principal Investigator |
佐久間 尚子 (財)東京都老人総合研究所, 言語認知部門, 助手 (70152163)
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Keywords | 健常老化 / 言語 / 語想起 / カテゴリー / 人名 |
Research Abstract |
人は生涯に膨大な単語知識を貯える一方、加齢にともない単語を検索し生成する能力が低下する。特に、人名などの固有名詞が思い出しにくくなると言われている。本研究は、一定時間にたくさん言葉を想起し生成させる「語想起課題」を用いて、高齢者の語想起能力とその低下のメカニズムを検討することを目的とする。 これまでに、健常高齢者46名(平均74歳、66-83歳)と若年者46名(平均20歳、18-25歳)を対象に、音韻、生物、人工物、固有名詞などにわたる48カテゴリーの語想起実験を行った。高齢群は総じて成績が低く、若年群の約74%の生成率となった。特に、人名は54%の生成率となり想起困難が顕著だった。今年度は、生成された約36000語の時間経過と、親密度、心像性などの単語属性、および生成語の内容について分析した。30秒間に伴う生成語数の時間的推移をみたところ、若年群は開始後2-3秒目に高いピークを迎えるのに対し、高齢群は3-5秒目に緩やかなピーク(若年群の約6割)を迎え、その後は両群とも徐々に減少した。両群の生成語数の差は、主に開始直後によって生じ、時間制限(30秒)によるのではなかった。また、両群とも概ね、親密度、心像性の高い語から生成し、時間と共に徐々に低い語に移行した。次に、再生語の内容の一致度を検討した。高齢群と若年群の各カテゴリーの再生頻度を求め、スピアマンの順位相関係数を求めた。概ね有意な相関がみられたが、「化粧品、政治家、女優、歌手・タレント、東京23区、性質・状態」の6カテゴリーでは有意な相関がみられず、両群の生成語の内容は異なった(例、高齢群は昔の女優、若年群は最近の女優を生成する傾向がみられた)。 今後は、被験者数を増やし、高齢前期(65-74歳)と高齢後期(75歳以上)の被験者群の成績を比較すると共に、同一被験者に同じ実験をくり返し、再現性を検討する予定である。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] 佐久間尚子,田中正之,伏見貴夫,伊集院睦雄,辰巳格: "健常高齢者の語想起能力の検討(2):48カテゴリーの語想起へ時間分析"神経心理学. 16・4. 29 (2000)