2000 Fiscal Year Annual Research Report
ライフスタイルとケア役割から見た成人女性のアイデンティティ発達過程に関する研究
Project/Area Number |
11610121
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
岡本 祐子 広島大学, 教育学部, 助教授 (90213991)
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Keywords | アイデンティティ / 成人女性 / ライフスタイル / ケア役割 / 関係性 |
Research Abstract |
【目的および方法】本年度は面接調査(研究II)を行い、「個としての達成」と「他者へのケア的関与」の視点から、成人女性の青年期以降のアイデンティティ発達変容のプロセスを分析した。本報告書では、今年度実施した10名の対象者の分析結果を述べる。38歳から51歳の女性10名(幼稚園・小・中学校教師4名、大学の研究者3名,専業主婦3名)に、個別の半構造化面接を行った。 【結果および考察】成人女性のアイデンティティ発達変容プロセスは、現在(中年期)のライフスタイルよりも、「個」と「関係性」という青年期のアイデンティティ形成の基盤によって、大きく異なっていた。(1)青年期のアイデンティティ形成のタイプ:I.個を基盤にしたアイデンティティ形成(6名):個としての自立(職業的自立)への強い志向性をもつ。教師の3名は、成長期に担任教師や親など、身近にそのよきモデルを有し、そのイメージを取り込む形で進路選択が行われていた。研究者2名は、明確な研究者への志向性を有し、大学院とその後の学位取得までの長い訓練期間に持続した意志力が認められた。II.関係性を基盤にしたアイデンティティ形成(4名):キャリア・職業的自立への志向性は低い。結婚・家庭建設が青年期の最重要課題であり、それへの積極的関与によってアイデンティティ形成が行われていた。 (2)中年期のアイデンティティ危機の特質:【I型】1)自分の職業の関与のあり方・意味の問い直し、2)Totalな生き方の問い直し(生き方全体、家族・夫への関与),複数のアイデンティティや役割のバランスの崩れがアイデンティティの危機を引き起こしていた。【II型】(1)「自分らしさ」を表せるキャリアをもちたい、(2)これまでやり残してきたことをやりとげたいなど、「自分」を確立したいという欲求がアイデンティティ危機の中核となっていた。自分や家族・重要な他者の病気や死の体験は、強烈に自分の人生の見直しを迫るものであり、I型、II型に共通したアイデンティティ危機の契機であった。
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Research Products
(2 results)