2001 Fiscal Year Annual Research Report
作動記憶理論とバイリンガル二重符号化理論に基づく手話言語の記憶過程に関する研究
Project/Area Number |
11610123
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Research Institution | HIROSHIMA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
松見 法男 広島大学, 大学院・教育学研究科, 助教授 (40263652)
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Keywords | 手話言語 / 作動記憶 / バイリンガル二重符号化理論 / 視・空間短期記憶 / 並行課題 / 手話単語のイメージ性 / 対連合学習 / 記憶表象 |
Research Abstract |
本研究は,音声言語を主なる対象としてきた認知・言語心理学の分野で,新たに手話という音声を伴わない言語を対象とし,その記憶過程を実証的に解明しようとするものである。 平成13年度は,作動記憶理論に基づく実験1,2と,バイリンガル二重符号化理論に基づく実験3を行った。手話の符号化には,視覚・運動イメージという視・空間情報の処理と一時的保持が不可欠だが,平成12年度の実験では,視・空間短期記憶が重要な役割を果たすという結果は得られなかった(松見,2001)。ただし,この実験では「ペダル踏み」という空間成分に関わる並行課題が採用され,視覚的イメージなどの視覚成分に関わる並行課題を用いた検討がさらに必要となった。そこで実験1では,並行課題として図形記憶課題を用い,手話単語の動作幅の大小を操作して,手話学習未経験者に手話単語と日本語単語の対連合学習を行わせた。実験2では,並行課題として記号記憶課題を用い,手話単語のイメージ性の高低を操作して,同じく手話学習未経験者に手話単語と日本語単語の対連合学習を行わせた。その結果,学習試行数の増加に伴う手話単語の再生成績の上昇パターンは,図形・記号記憶課題の有・無条件間で異なり,図形や記号の視覚的リハーサルが手話動作の符号化を妨害することがわかった。視覚成分に関わる視・空間短期記憶は,手話の学習に重要な役割を果たすといえよう。実験3では中級学習者に,手話-手話表現,手話-日本語翻訳,日本語-手話翻訳,日本語-日本語表現の4課題を偶発学習事態で行わせ,日本語単語の自由再生成績を比較した。刺激語の提示形態に関する記憶も調べた。その結果,バイリンガル二重符号化理論に基づく手話単語の記憶過程について新たな解釈の可能性が示された。上記の結果の一部は,日本教育心理学会第44回総会(平成14年10月:熊本大学)で口頭発表される予定である。
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Research Products
(2 results)