1999 Fiscal Year Annual Research Report
親子間での資源移動と情緒的絆に関する発達心理学的研究
Project/Area Number |
11610138
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Research Institution | Shirayuri College |
Principal Investigator |
永久 久子 白百合女子大学, 文学部, 助手 (90297052)
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Keywords | 家族 / 資源 / アイデンティティ / 関係性 / 個人化 |
Research Abstract |
本年度は、家族間での資源(経済資源・ケア資源・時間資源・情緒資源)の流れと、母親の個人化傾向との関わりを発達的に検討するため、面接調査を行った。予備的面接を15名に行った結果、回想をライフステージごとに行いそれを整理して語ることが困難であることがわかった。そこで、ライフステージごとに資源を何にどの程度分配したかを、複数の円で(資源を多く投入したものは大きな円で、相互に関連する事柄は円を重ねて)表現し、それを基に語ってもらう方法を考察した(心的エネルギー分配図)。 心的エネルギー分配図を利用して面接を進めることは、以下のようなメリットがある。(1)何がその時の生き方の中心だったのかを被面接者自信が意識し描くことで、漠然としていて語りにくい生活の記憶が、抽象的に整理して語られ易くなる。(2)面接者と被面接者が共に分配図を見、確認しながら面接を進めるため、具体的に語られた内容を調査者が抽象的に理解・整理する際に生じる歪みを、ある程度修正することができる。(3)サンプル間の比較を行う際に、円の大きさやその内容を手がかりに客観的に比較できる。40代の女性20名に面接を行い、関係性を基盤とする生き方と個を基盤とする生き方がどのように発達してきたか、そのことに資源の流れはどのように関わっていたか、を軸に分析を行った。その結果、以下のことが明らかになった。(1)中年期にはアイデンティティの基盤を「家族との関係性」と「個」の両方に求めようとする傾向が全サンプルに共通して見られた。(2)青年期の後半に個としての自分への関心が弱い人は、その資源を「家族の関係性」に集中的に注ぎ、個としての自分に資源を使うことが少ない。その結果、中年期に個としてのアイデンティティの基盤を持ちにくく、模索や焦りが続いている場合が多い。(3)自分の親に対しては自分自身がケア資源及び時間資源を提供しようとするが、夫の親に対しては夫がケア資源・時間資源を提供すべきと考える傾向がみられた。このことから責任・規範基盤を「家族との関係性」と[個」の両方に求めることができた人は、次の段落に社会のためになるような生き方という、より広い意味での関係性を基盤にした生き方を求める傾向がみられた。 以上の結果を踏まえ、質問紙調査の準備をした。
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