2001 Fiscal Year Annual Research Report
親子間での資源移動と情緒的絆に関する発達心理学的研究
Project/Area Number |
11610138
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Research Institution | Shirayuri College |
Principal Investigator |
永久 ひさ子 白百合女子大学, 文学部, 研究助手 (90297052)
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Keywords | 母親 / 高学歴化 / 子どもへの感情 / 個人としての生き方 / 子育て |
Research Abstract |
女性の高学歴化が進む中で、さらに女性の個としての生き方への関心は強まると思われる。晩婚化・少子化・育児不安など、家族をめぐる様々な問題の背景には既婚女性の家庭役割と個人としての生き方の葛藤があると推測される。本研究ではこの葛藤を、母親自身の時間やエネルギーの配分に関する葛藤として捉え、資源配分と子育てへの感情の関連を検討した。 248名の大学生の母親を対象に、資源配分と生活感情に関する質問紙調査を行った。資源配分とは、時間や心理的エネルギーを有限の資源と捉え、それを家族と自分自身とにどのように配分しているかを見るものである。生活感情は、夫、子ども、親との関係、及び個人としての生き方について、どのような評価的感情を経験しているかを見るものである。全般的には、多くの資源を配分している対象への感情は高くなる傾向が見られる。 自身への資源配分と生き方への感情の関連を学歴別にみると、高卒群は、自身への配分と個人としての生き方への不安・焦りの感情との間に関連はないが、大卒群は負の相関関係にあった。このことから、低学歴群は個人としての生き方への関心はあっても曖昧であったり、それを実現するための手段や行動が明確でないために、自身のための資源配分が少ないことが、生き方への不安や焦りには結びつかないのではなかろうか。 資源配分と子どもへの感情との関連を学歴別に検討すると、自身への資源配分と子どもへの感情との間に、高卒群では関連が見られるが大卒群では関連が見られなかった。このことから、低学歴の母親では、子育てが個人としての生き方とも認知されているのに対し、高学歴の母親では、子育てと個人としての生き方とは独立と捉えていることが推察される。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] 永久ひさ子, 柏木惠子: "中年期の母親における「個人としての生き方」への態度"発達研究. 16巻(印刷中). (2002)
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[Publications] 永久ひさ子, 柏木惠子: "既婚女性における生き方の基盤の発達"日本心理学会第64回大会論文集. (2000)
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[Publications] 永久ひさ子, 柏木惠子: "女性における生き方の基盤の発達-自我同一性地位との関連から-"日本発達心理学会第12回大会論文集. (2001)
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[Publications] 柏木惠子, 伊藤美奈子 編: "女性のライフデザインの心理"大日本図書. (2001)