1999 Fiscal Year Annual Research Report
価値としての公正:社会的同一視モデルによる分配結果と手続きの統合的研究
Project/Area Number |
11610149
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Research Institution | Koshien University |
Principal Investigator |
竹西 亜古 甲子園大学, 人間文化学部, 講師 (20289010)
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Keywords | 手続き的公正 / 分配的公正 / 関係性 / 社会的同一視 / 価値感 / 国政評価 |
Research Abstract |
本研究の目的は、1)公正感が、個々の成員にとって、いかなる価値と結びついるがゆえに、社会行動に影響を及ぼすのかを明らかにし、2)公正感と価値の結びつき方を規定する要因として、社会的同一視程度を同定し、3)公正判断における社会的同一視モデルを構築することによって、分配的公正と手続き的公正を総合的にとらえ直すことである。 本年度は、4年計画の初年度に当たることから、これらの目的に沿った基礎的データの収集を実施した。データは、京都市有権者1115名を対象とし、現小渕内閣の国政をテーマとした調査で集められた。郵送訪問回収法により、平成11年12月実施。有効回答数は698、回答率62.6%であった。本調査では、潜在構造モデルの検討に向けて、以下の8群の構造変数を測定する項目を設けた。(1)政治的権威に対する分配的公正感 (2)政治的権威に対する手続き的公正感 (3)権威との関係性評価 (4)権威の道具性評価 (5)権威是認程度 (6)集団指向行動 (7)社会的同一視程度、 (8)価値観である。(1)から(4)が2種の公正ならびに公正動機に関する測度、(5)および(6)が公正感に影響される社会行動の測度である。また、集団指向行動は、権威による負の分配の受け入れ、内集団成員に対する支持・援助、加えて、外集団への支持・援助の3側面から測定された。社会的同一視程度の測度としては、研究代表者による先行研究で有効な媒介変数と認められた"pride"と"respect"に加え、集団自尊心尺度を改変したものを用いた。価値観については、功利-博愛の軸を取り上げ、国政場面にもとめる価値と生き方における価値を尋ねた。複数の構造モデルを検討した結果、社会的同一視程度の要因が権威是認などに影響を及ぼすとともに、公正動機に関わることが示唆された。次年度は、社会的同一視程度の尺度構成をさらに検討する予定である。
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