2000 Fiscal Year Annual Research Report
視覚メディアにおけるジェンダー・ディスプレイのミクロ社会学的分析
Project/Area Number |
11610171
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
安川 一 一橋大学, 大学院・社会学研究科, 助教授 (00200501)
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Keywords | 視覚メディア / ジェンダー・ディスプレイ / ミクロ社会学 / 映像データベース / 視覚社会学 |
Research Abstract |
本研究は、視覚メディアのジェンダー・ディスプレイを素材とした映像データベースを相互行為論的に分析しつつ、そのことを通して「視覚経験の社会学」を理論的方法論的に整備しようとする試みである。2年目の今年度の作業は昨年度の作業を継続・拡充した。 映像データベースには、QuickTimeムービーによる延べ約11000のTVコマーシャル映像を蓄積した。作業は、既使用分とは別時期に収録した放送録画テープ(在京キー局5局の計280時間分)を素材にして現在も継続しており、最終的(次年度)には、1998年夏冬のTVコマーシャルをもとに、延べ20000レコード以上、総量200GB程度のデータベースとなる。並行して、人物を中心にした雑誌広告を素材とする画像データベースを試作し、これに800程度のレコード蓄積を済ませている。画像データベースの拡充、そして両データベースの比較検討を可能にする分析フォームの作成と分析が次年度の課題となった。 映像データベースはまた、エスノグラフィ的手法によるTVオーディエンス研究を手掛かりに、映像蓄積のみならずそれ自体を分析ツール化することを目的に改編された。すなわち、個々のレコードに閲覧者の読解を入力できる不定型データ・フィールドを作成し、そこへの記述内容自体を容易に検索・分析できるようにした。これは次年度に実施予定の視聴実験において活用する。 他方、視覚経験を扱う社会学的な先行研究は基本的に「映像の社会学」だった。それらは何らかの反映論(社会構造や社会的差違や社会的権力の)を前提にし、映像それ自体のあり方、さらには「見る/見える」ことそれ自体のあり方を等閑視・自明視することが多かった。視覚という営みのあり方自体を分析可能にする社会学的枠組み(視覚社会学)の必要性が明確になり、上記データベースの内容分析を踏まえてそうした枠組みを整備することが最終的な課題となった。
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