1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11610219
|
Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
田中 滋 龍谷大学, 社会学部・社会学科, 教授 (60155132)
|
Keywords | 流域社会 / 河川環境 / 豊かさ / 危険性 / 近代社会 / 生産 / 消費 / 廃棄 |
Research Abstract |
本研究は、「流域社会」の凝集性が河川の環境保全に貢献してきた点に注目しつつ、現代的な新たなネットワークにもとづく「流域社会の再構築」とそれによる河川環境の保全の可能性について社会学的に考察しようとするものである。 本年度は、いくつかの河川・湖沼(長良川、琵琶湖、川辺川など)に関する資料収集ならびにフィールドワークを行ない、次のような知見を得た。 「前近代社会」における「流域社会」は、自然環境そのものの豊かさやそれを基盤とする生産、消費の豊かさや文化の豊かさ、さらに自然環境がもたらす危険(洪水・渇水)などを主たる要素としてダイナミックな形で成立していた。これに対して、「近代社会」は、洪水や渇水などの危険性をダム建設によって最小化すること(治水と利水)で、近代的な生産と消費の拡大を図った。この過程で、従来の「流域社会」は崩壊し、それを再構築することが必要となるなどとはまったく考えられなくなった。 しかし、過剰なダム建設や生産・消費過程から生み出されたさまざまな廃棄物による河川環境の破壊は、まったく新たな危険性を生み出した。現在の段階では、これらの危険性は、個別的に対処されているに過ぎないが、その危険性を回避するための基盤となる「流域社会」の再構築が必要となってきているとの認識が萌芽的に拡がりつつある。
|