2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11610219
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
田中 滋 龍谷大学, 社会学部, 教授 (60155132)
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Keywords | 流域社会 / 河川環境 / 山村 / 都市 |
Research Abstract |
本研究は、「流域社会」の凝集性が河川の環境保全に貢献してきた点に注目しつつ、現代的な新たなネットワークにもとづく「流域社会の再構築」とそれによる河川環境の保全の可能性について社会学的に考察しようとするものである。 本年度は、京都府美山町を流れる美山川流域の芦生地区に関する資料収集ならびにフィールドワークをインテンスィブに行ない、次のような知見を得た。 流域社会における近代化過程は、優位な中心としての下流(都市)から劣位な周辺としての上流(山村)への様々な「システム(貨幣経済など)」とその「要素(商品など)」の一方的な流入と、様々な「資源(人的・物的な資源とエネルギー資源)」の上流から下流へのやはり一方的な流出という形を取った。別の言い方をするならば、下流の都市からは「意味」が上流の山村へともたらされ、上流からは「モノ」「ヒト」が下流へと引き寄せられていった。こうした状況の中で、山村の人々が下流の都市からやって来る圧倒的な「システム」や「意味」に対抗してオータナティブな何かを提示することは非常に困難なことである。 その点において、大学演習林の立地する芦生はまさに例外的ケースである。芦生には、押し寄せてくる経済や行政施策などのシステムに対抗することを可能にする「学術的価値」や京都大学の威信があった。それらは、芦生の人々の行為に独自の「意味」を与えてくれた。
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