1999 Fiscal Year Annual Research Report
アントニオ・グラムシ著『獄中ノート』の社会学史的比較のための基礎研究
Project/Area Number |
11610221
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Research Institution | Momoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
鈴木 富久 桃山学院大学, 社会学部, 教授 (11610221)
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Keywords | グラムシ / マルクス / フォイエルバッハ・テーゼ / 人間 / 個人 / 社会 / 人類 / 弁証法 |
Research Abstract |
当初の計画では、グラムシの人間論のほか、経済論、文化論、イタリア近代史分析の検討も始めるつもりであったが、思いの外、人間論の検討に時間がかかり、その検討にとどまった。だが、新しい重要な知見を得た。 1.従来『獄中ノート』におけるグラムシの人間論がマルクスの「フォイエルバッハ・テーゼ」6の継承線上にあることは明白であったが、実はグラムシ自身の探究過程で、「人間性」論から「人間」論への転回が起こっており、そこでは上記「テーゼ」6のみならず「テーゼ」3にも準拠し、両テーゼの統合において彼の「人間」論が立論されていることが検出された。 2.この転回により、グラムシの人間論は、個人の次元に焦点が当てられると同時に、マルクスの「社会的諸関係」は、当の個人が取り結ぶ「活動的諸関係」として捉えなおされ、この関係における個人の受動-能動の弁証法、さらに、社会における個人の「中心-部分」という思想史上・社会学史上でも従来まったく議論されたことのない独特の二重構造的位置関係が捉えられ、それが彼の人間論に内包されていることが明らかになった。 3.さらに、「個人-諸社会(諸集団)-人類」の関係を「個別-特殊-普遍」の関連において把握する際の生きた弁証法の論理をもグラムシが提起していたことが析出された。 人間論の検討は、まだ完了していない。論文としては(下)を執筆しなければならない。当面、これを早期に達成すると同時に、国内外の一部で流布されているグラムシ人間論の「関係主義」的解釈の問題点を批判的に検討し、その後、引き続き当初の計画にしたがった研究を推進していく予定である。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 鈴木富久: "グラムシ「人間とは何か」解析試論-『獄中ノート』における哲学的人間論の展開・その2-(上)"桃山学院大学総合研究所紀要. 25巻1号. 49-72 (1999)
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[Publications] 鈴木富久: "グラムシ「人間とは何か」解析試論-『獄中ノート』における哲学的人間論の展開・その2-(中)"桃山学院大学総合研究所紀要. 25巻2号. 21-34 (2000)
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[Publications] 鈴木富久: "グラムシ『獄中ノート』校訂版研究特集を読んで"季報唯物論研究. 68号. 110-118 (1999)