2000 Fiscal Year Annual Research Report
アントニオ・グラムシ著『獄中ノート』の社会学史的比較のための基礎研究
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11610221
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Research Institution | Momoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
鈴木 富久 桃山学院大学, 社会学部, 教授 (50235975)
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Keywords | マルクス / 戸坂潤 / 廣松渉 / 個人 / 自己 / 生成 / 技術 / 科学 |
Research Abstract |
前年度の報告書において、グラムシ人間論の検討はまだ完了しておらず、その論文の(下)を執筆すること、さらに、グラムシ人間論の「関係主義」的解釈を批判的に検討すること、その後、次の研究に移行すると記した。実績は、上記(下)として想定していた研究対象のテキスト部分が予想以上に複雑な諸問題を内包していることが明らかになり、(下)を2つに分け、今年度は(下-1)を発表した。他方、「関係主義」的解釈の批判は果たし得、雑誌論文として発表した(2回分載)。 こうして今年度も人間論の研究に留まったとはいえ、以下のような、その解読上の重要点をいくつか新たに検出し得、彼の思想全体の鍵概念である「ヘゲモニー」概念とのつながりも突き止め得た。 1.グラムシの人間論は、総体としての「人間性」論においても、個体性論においても、弁証法的な意味での自己媒介的な生成の論理を根底に据えていること、この点を検出、明確化しえた。 2.グラムシ人間論の鍵概念が「活動的関係」の概念にあることは、すでに明らかにしてきたが、この概念が、この「活動的関係」とは彼の概念としての「ヘゲモニーの関係」に他ならないことが、今回明らかになった。この点は、今後、グラムシの思想体系のなかで彼の人間論が占める理論構造上の位置を探るための決定的な環になりうると考えられる。 3.グラムシの考える「歴史的ブロックとしての個人」と、他方有名な彼の「構造と上部構造との歴史的ブロック」との区別・関連が明らかになった。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] 鈴木富久: "グラムシ「人間」論の論理と射程(上)"季報唯物論研究. 72号. 17-33 (2000)
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[Publications] 鈴木富久: "グラムシ「人間」論の論理と射程(下)"季報唯物論研究. 73号. 118-134,138 (2000)
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[Publications] 鈴木富久: "グラムシ「人間とは何か」解析試論-『獄中ノート』における哲学的人間論の展開・その2-(下-1)"桃山学院大学総合研究所紀要. 26・2. 1-20 (2000)
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[Publications] 鈴木富久: "「実践の哲学」の人間論"グラムシ通信. 43号. 4-8 (2001)