Research Abstract |
自然保護と経済発展との相乗により概念形成されたエコ・ツーリズムは,混沌とした現代社会において人々に喜びを与え,自身や自身を取り巻く環境を考える機会を提供した。エコ・ツーリズムにおいて重要なことは,自然や文化の保全と地域振興,社会環境の健全化であが,エコ・ツアーの大衆化は豊かな人間形成や環境問題への関心を啓発させ効果が期待できる。本年度は,パーソナル・ツーリズム研究の一環として,北海道知床地域のエコ・ツーリズムをテーマに,観光者の受け入れ側(ホスト側)に焦点を当てて現状と課題を探った。 1970年代に始まった知床100m^2運動やボランティアによるインタープリター活動,地域住民によるNPO活動は,知床におけるエコ・ツーリズムのパブリック・インボルブメントの象徴的存在となり,バランスのよい観光開発に多大な貢献を果たした。エコロジカルなバランスは投資,住民の反応,来訪者の満足,自然環境などの要素が強制されることなく機能することと規定されるが,知床においてはカムイワッカ地区の自然環境保全と渋滞緩和を目的とした,行政機関,観光業者の協力によって実現した自動車通行規制の実施が,エコ・ツーリズムのあり方,ならびに持続的発展を考える上で示唆を与えるものであった。 一方,知床のエコ・ツーリズムは,1995年以降の観光者の急増により,財団のインタープリターに加えて,NPO,民間企業,ボランティアなど地域社会の多様なグループ,個人が関与するようになった。このような動きは,プロジェクトの多様化を促進し,地域色を出すことに繋がっている。斜里町の観光のテーマは,自然環境の保護と適正な利用,観光産業の持続的発展である。このテーマの遂行には,広範囲な人々の関与が不可欠であり,ホスト,ゲストによる幸せをもたらす変化への挑戦が期待される。
|