1999 Fiscal Year Annual Research Report
病院組織における助産婦と出産の正常性-誰が「正常」と認めるか-
Project/Area Number |
11610232
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Research Institution | Tokyo Bunka Junior College |
Principal Investigator |
大出 春江 東京文化短期大学, 家政科, 教授 (50194220)
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Keywords | 出産 / 妊娠 / 助産婦 / 病院組織 / 医療 / 質的分析 / 自然分娩 / 産む文化 |
Research Abstract |
平成11年度の研究として、文献研究および、系統的に行われた大量観察に基づく調査報告書を相互に綿密に検討し、その一方で助産婦職能団体、医療系大学、病院勤務助産婦、助産院開業者らの婦有資格者からの聞き取りを実施した。これらの作業を通じ、当初の問題の設定自体を変更する必要があることが明らかになった。すなわち、出産の正常性-異常性の判断軸を医師-助産婦に典型的に見られるスタッフ間の権力関係の結果としてだけとらえるだけでは不十分であり、むしろ病院組織それ自体のもつ構造的特性に目を向ける必要が認識された。 病院組織を構成する看護部長、産(婦人)科婦長、産婦人科医師、助産婦、看護婦といったスタッフは、それぞれの職業的位置によって、助産婦に対し異なる評価や期待をもつ。看護婦と同様の仕事を期待される一方で医師と同水準の知識と技術を期待されるなど、異なるベクトルをもつ期待の交差の中で、助産婦自身が、助産婦としての自分の技術に対し高い信頼感をもてないでいる現状をこそ研究課題の焦点にすべきだと考えるに至った。 こうした現状を招く要因を考察していくと、1)病院組織自体がもつ構造的要因(配置転換、勤務交替制、医療行為の定義と規制)、2)出産数の減少とそれに伴う助産婦職の需要低下と助産婦教育への影響、が主要な条件となって、本来的に助産婦に期待される継続性のある一貫した妊産婦への援助と分娩介助への志向を妨げる傾向が示唆された。出産の医療化に歯止めをかけようとする動きは、産む女性と助産婦の連帯という形で、少しずつ実現の形をとろうとしているが、もっとも出産が行われる病院においてこそ検討されるべき変化として捉えるならば、その変化の条件はなにかという観点から、平成12年度はこうした取り組みにより積極的な勤務助産婦、助産婦教育現場にある教育者、助産婦職能団体が行っている研修等の取り組み、そして開業助産婦への聞き取りを中心に調査を進めていくつもりである。
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