2001 Fiscal Year Annual Research Report
戦後日本における中等教育と高等教育の接続関係に関する研究
Project/Area Number |
11610289
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Research Institution | Gifu Keizai University |
Principal Investigator |
三羽 光彦 岐阜経済大学, 経済学部, 教授 (90183392)
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Keywords | 学校制度 / 中等教育 / 高等教育 / 大学 / 高等学校 / 大学院 / 教育課程 / 接続関係 |
Research Abstract |
1.これまでの考察で、以下のことを仮説的に提示した。(1)1950年代から70年代の高度成長期には、高校、ついで大学の大衆化が進行したにもかかわらず、大学と高校が連続的に接続する教育課程構造にならなかったこと。(2)そして、大衆社会の進行する中で学生の学力水準低下が教育上の問題としてさほど重要視されず、接続問題は教育問題として自覚化されなかったこと。(3)しかしその問題は潜在的に深刻化していたこと。本年度はこれらを実証的に解明することをめざした。 2.こうした問題を比較的深刻に受け止めたのは、理工系大学であった。高校の多様化や序列化の進行は、ある意味では理工系大学での水準確保を企図した政策であった。この点を、「経済審議会」、「中央教育審議会」等の審議を分析することによって明らかにした。 3.70年代以降学生の教養水準の低下が顕著になってきたが、以下の点がその要因として存在したと考えられる。(1)一般社会の文化状況の変化。(2)高校・大学教員層の入れ替わり(新制大学卒業者の教員進出)。(3)大学教育の土台としての高校教育内容の脆弱性の露呈など。このことを、『高等教育研究叢書』、『一般教育学会誌』の諸調査・諸論稿を分析する中で、明らかにした。 4.そしてより本質的には、これらの問題の背景に、現代日本における「教養」の喪失があったと考えられる。この点は現在仮説にとどまっているが、高校・大学を通して、「教養」の伝統を基礎として連続した教育課程編制が考究されなかった点が問題ではなかったかと考える。この点の実証は今後の課題である。本研究計画最終年度である来年度に研究論文としてまとめたい。
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