2000 Fiscal Year Annual Research Report
フランス国民教育制度成立期における教育法紛争の研究
Project/Area Number |
11610294
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Research Institution | Osaka University of Economics |
Principal Investigator |
高津 芳則 大阪経済大学, 経済学部, 助教授 (90206772)
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Keywords | フランス / 教科書 / 検定制度 / 義務教育 / 第三共和制 / 教育の自由 / 父母参加 / 教師の教育権 |
Research Abstract |
国民教育制度成立期に教科書が法的紛争問題となったのは、義務教育制度の確立以降も、カトリック宗教勢力が義務教育に対して批判的な態度をとったためである。 そのため、普仏戦争(1870年)以降の義務教育制度導入をめぐる論争を視野に入れて研究をすすめた。義務教育と共に、軍事教練の義務化を求めた教育連盟の動きは、19世紀後半に成立する帝国主義的義務教育制度の本質を明らかにする上で、解明されるべき課題である。教育連盟の中心メンバーであるジャン・マセの、義務教育を求める有名な『手紙』(1870年)などをフランス国立教育研究所でコピー入手し、翻訳をすすめた。 教科書制度そのものは、革命後導入された事前審査制度(検定制度)が失敗し、ギゾー法(1833年6月28日法)、1835年2月27日規則、ファルー法(1850年3月15日法)をへて、試行錯誤の結果、第三共和制になって、1880年6月16日アレテにより、初等教育教科書の自由選択制が、1881年10月13日通達によって、中等教育における自由選択制が導入された。そのため、形式上、教科書選択は教師の主体的判断によるということになり、選択権をもつ教師・学校が父母の批判対象となった。しかし、司法当局は、教育内容に関わることをさけ、もっぱら教師の教科書選択における法定手続上の瑕疵有無に論点を限定し、宗教勢力からの介入を阻止している。そのため、20世紀初頭において、教科書をめぐる教育法紛争はしだいに収束していくが、これを、フランス研究者(アラン・ショパン)は、教科書制度の完成成熟ととらえている。しかし、『国民教育総視学官報告書』(1999年)の教科書分析と、それについてのマスコミの対応をみるならば、そのような理解についてはさらに検討が必要である。
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