Research Abstract |
本年度の研究の目的は,小児がん入院治療に伴う子どもの体力低下および退院後の体力回復の実態を縦断的に把握し,体力低下や体力回復に関与する諸要因を明らかにすることであった. 対象は小児がん治療中および治療終了後経過観察中にある子ども41名(幼児5名,小学生27名,中学生8名,高校生1名)であった.予め保護者に対して研究の主旨および危険性などについて説明をし,参加の同意を得た後にアンケート調査,形態計測および体力測定を実施した.年齢,性別の影響を除くために,数値はすべて日本人の体力標準値(新・日本人の体力標準値2000,東京都立大学体力標準値研究会編,不昧堂出版,2000)を用いて標準化(Z得点化)した.ただし,体力測定項目のうち,垂直跳びについては5歳以下,立位体前屈については6歳以下の標準値は明らかにされていなかったため,両項目における有効数はそれぞれ36名と34名であった. Z得点が-2.0より低値を示す極度に体力の低い子どもの人数(割合)は,握力で10名(24.4%),背筋力で18名(43.9%),垂直跳びで13名(31.7%),立位体前屈で9名(22%)あり,閉眼片足立ちではZ得点が-2.0より低値を示す子どもはいなかった.これらの結果は,小児がん治療によって子どもの体力レベル,特に筋力,瞬発力,柔軟性が低下した可能性のあることを示唆している.また,41名中6名について初回測定から5〜6ヶ月後に同様の測定を再び実施したところ,実測値では握力と背筋力に有意な増加が認められ,Z得点では背筋力のみが有意に増加した.しかしながら,この筋力発揮能力を改善させた要因については,今回例数が少なく,十分な検討ができなかった.今後,縦断的なデータの数を増やすことによって,詳細な検討を行いたい.
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